2
1年後、6歳・・・。
「光一!!空手で喧嘩するな!!」
じいちゃんが開いている空手道場で、今日も俺よりも年上の兄ちゃん達と取っ組み合いの喧嘩をしていく。
今日は3人で一気に戦いを挑んできて・・・
俺は笑いながらその全員を軽々と倒した。
そんな俺の頭に・・・
ゴッとゲンコツが落ちてくる。
「・・・じいちゃん、気配なかったぞ・・・。」
頭を両手でおさえながらじいちゃんを見上げると、ツルッパゲのじいちゃんが眉毛があるであろう場所を片方上げながら俺のことを睨み付ける。
「何度も言わせるな、光一。
空手は喧嘩をするものじゃない。
守る為に戦う。
その手段の1つだ。」
「何が守る為に戦うだよ。
先手を打つ必要はねーとか、笑わせるなよ。
相手が先手を打ってくる前にやっつけた方が早いだろ!!」
「・・・お前をここに連れてきてから、喧嘩っ早い生徒が増えてきてるからな。
他の生徒にも良くないから、頼むから大人しくしてろ。」
「うるせぇ!!ハゲ!!!」
大笑いしながらじいちゃんにそう叫ぶ。
そう叫んでから、すぐに構えた。
“ハゲ”の言葉で、じいちゃんが本気を出すから。
集中して構える・・・。
「俺をハゲって言ったな・・・?」
生まれつきハゲてるじいちゃんが、俺を睨み付けながら構えた。
そして・・・
めちゃくちゃ先手を打ってくる。
さっきの言葉はどうしたんだよってくらい、先手を打ちまくってくる。
それに、俺が受けてかわしていく。
そして、たまに隙をついて攻撃も・・・。
「「オォ・・・」」
と、空手道場にいる大人達が感心する声が聞こえてきて、俺は笑いながら後ろ回し蹴りをじいちゃんの腹にめがけてした時・・・
俺の足をじいちゃんが掴んだ・・・。
そして・・・
俺の股関と肩の所をガッシリと掴み・・・
身体を高く持ち上げてきた・・・。
空手技なんて無視して、そんな技をしてきた・・・。
それに俺が大笑いした時、積まれていたマットの上に放り投げられた。
「じいちゃん!!すっげーー!!!
もう1回!!!」
「勘弁しろよ、光一・・・。
年寄りには優しくしろ・・・。」
「うるせぇ!!ハゲ!!!」
俺がそう叫ぶと、今回はすぐに絞め技をしてきた。
それに俺が全身を使い抜け出してみせる。
そんな俺にじいちゃんが興奮した顔をして構えてきた。
それに大笑いしながら、俺も構える。
「次に開かれる試合に出てみるか、光一。」
「試合なんて興味ねーよ!!
空手技しか出来ないなんて、つまんねーだろ!!」
「お前は本当に・・・鮫島にソックリだな・・・。」
「あんな弱っちい父親と一緒にするなよ。
あっけなく死にやがって。」
俺がそう言うと、じいちゃんは困ったように笑った。
「“お母さん”、今日の夜ご飯何?」
家に帰ると、リビングの隣にある理子の遊び場で桃子と理子がままごとをして遊んでいた。
「今日の夜ご飯はハンバーグだよ、理子。」
「やったぁ!理子、“お母さん”のハンバーグが大好き!!」
そう言って、4歳になった理子がオモチャのハンバーグを食べる真似をしている。
それを桃子が優しい笑顔で見下ろしている。
そんな2人を見ながら、俺は笑った。
「本物のハンバーグ作ってやれよ、“お母さん”。」
「・・・うるさい、八重さんが火は危ないからって作らせてくれないんだもん。」
ばあちゃんのことを“八重さん”と呼び、頬を膨らませ俺のことを見上げてくる。
さっきまでの“お母さん”の顔ではなく、“桃子”の顔で。
「そんな全然可愛くない顔で俺のこと見るなよ、気持ち悪い。」
本当のことを言うと、桃子は怒った顔で俺のことを睨み付けた。
「ほんっっっとに光一ってクソガキ!!」
怒りながら、理子が食べる真似をしていたハンバーグを俺に投げつけてきた。
そしたら・・・
理子がギャン泣きをした。
「理子が今食べてたの!!!!
桃子!!!ちゃんと“お母さんごっこ”やってよ!!!」
「・・・あ、ごめんね理子~。」
ままごとだと思っていたら、2人して“お母さんごっこ”をしていたらしい。
「お兄ちゃん!!邪魔しないでよ!!!」
「・・・いっっってーーーっ!!!」
俺の一瞬の隙をついて、理子が腕に噛みついてきた。
これは痛い、これは痛すぎて・・・。
何をしても離れないので、最終的に絞め技をして理子の口を無理矢理離した。
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