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光一side......
父親は2歳の時に死んだ。
母親は5歳の時に死んだ。
父親が俺に残した手紙には、
「お母さんと理子のことを守れ。」
そんなことが震える字で書かれていた。
母親が死んで、その時にじいちゃんが開き読んでくれた手紙を俺はその場で破り捨てた。
病気になんて負けやがった父親からの手紙なんていらなかった。
病気に負けておいて、どの口で息子に「お母さんと理子を~」とか言ってるんだよ。
クソヤロウが・・・。
クソヤロウどもが・・・。
早すぎだろ・・・。
死ぬの、早すぎだろ・・・。
どうするんだよ・・・。
どうするんだよ・・・。
こいつら、どうするんだよ・・・。
じいちゃんもばあちゃんも、黒い服を着たまま家で項垂れ泣き叫び・・・
3歳の理子はそれを見てギャン泣きし・・・
中学1年の桃子は体育座りをしながら部屋の隅で泣き続ける・・・。
そんなカオスな部屋の中を、5歳の俺は両手を強く握り締めながら見ていた。
葬式の時に立ててあった写真立ての中で笑う母ちゃんと“良樹(よしき)”を睨み付けながら・・・。
10月に入って半分くらい経った時のことだった。
「紅葉狩りに行こう」
それが俺が聞いた、良樹の最後の言葉だった。
母ちゃんが運転する車の助手席に良樹が乗って、俺のことを嬉しそうな顔をして見詰めて言ったのが・・・。
ガリガリの顔で俺を見詰めて言ったのが、良樹の最後の言葉だった・・・。
*
1ヶ月後・・・
「おいこら、桃子!!飯!!!」
ばあちゃんが声を掛けたのにいつまで経ってもリビングに来ない桃子の部屋に入ると、制服姿のままベッドにうつ伏せで倒れている。
それを見て、言った。
「桃子も死んだか。」
「・・・私は死んでない。
私は死ねなかった。
私が死ねばよかった。」
「死神なんだから桃子は死ねないだろ。」
“死神”と呼ばれる桃子にそう言うと、桃子は少しだけ笑った。
少しだけ笑って・・・
「私、この家にいていいのかな・・・。
本当に、いいのかな・・・。」
「母ちゃんと良樹が再婚するはずだったから良いだろ。
遺言書?にも書いてあったんだろ。
母ちゃんと良樹、2人とも死んだ時のことが。」
「・・・あんなの残してたってことは、お父さんも理菜さんも思ってたんだよね・・・。
私が死神だって、思ってたんだよね・・・。」
「ま~たウジウジウジウジ言いやがって、面倒臭いババアだな!!」
「・・・うるさい、悪ガキ。
これでも学校では男子からモテモテなんだからね。」
「どこが良いのかサッパリ分からねーよ。
お前、全然可愛くないだろ。
顔も中身も。」
「中身は可愛くないけど、顔は可愛いらしいよ?」
全然可愛くない桃子がそんなことを言ってから、ゆっくりと起き上がった。
ボーッとした顔で俺のことを見詰めてきて、その顔をよく見てみる。
「やっぱり、全然可愛くないだろ。」
「クソガキ・・・。」
「クソババア。」
俺が返すと、桃子は怒った顔で立ち上がった。
「よし・・・!!行きますか・・・!!」
「最初から来いよ、面倒臭いババアだなマジで。」
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