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そんな言葉に愕然としていると、シルエットが続ける。




「桃子も俺のこと、“息子”に見てないだろ。

悪いけど、俺だって“母ちゃん”だなんて心から思ったことは1度もねーし、これからもねーよ。」




そんな・・・




そんな言葉には、ショックを受ける・・・。




「私は光一を“息子”だと思ってる・・・。

“息子”として見てる・・・。」




私がそう答えると、シルエットは少し黙った。

そして、そのシルエットが下を向いたのが分かる。

珍しく、光一が下を向いた・・・。




「本当に・・・?

本当に・・・本気で、俺のこと・・・」




少し震える声でシルエットが喋り、言葉を切った。




そして・・・




「じゃあ、裸になれよ・・・。」




「え・・・?」




「今、裸になれよ・・・。」




「なんで裸になるのよ・・・。」




「見られてもどうってことねーだろ?

息子に裸見られても、どうってことねーだろ?」




「・・・母親にだって羞恥心くらいはあるから。」




「ババアが何言ってるんだよ。」




「・・・うるさい、悪ガキ。」




私がそう返すと、光一が小さく笑った。




小さく笑いながら・・・




「昔から羞恥心ありすぎだろ、姉ちゃん。」




“姉ちゃん”と・・・




私を、“姉ちゃん”と・・・




そう、呼んだ・・・。




その言葉を聞いて、私は泣いた・・・。




「今更“姉ちゃん”とか・・・。

昔、呼んでくれたこともなかったのに・・・。」




「呼べねーだろ、何も“姉ちゃん”らしいところなんてなかったし。」




「そんなことはないでしょ、たぶん・・・。」




「・・・いや、ねーな。

今思い出そうとしたけど、“姉ちゃん”らしいところ1つもねーわ。

だから理子だって桃子のことを“桃子”って呼んでたからな。」




それには笑うしかなくて、泣きながら笑った。




「でも、良い“お母さん”ではあったと思うぞ。

“お母さん”をやってる時だけは、昔から良い顔してたからな。」




「私は・・・“お母さん”がいないから・・・。

理想の“お母さん”を、私がやってた・・・。

私が求める“お母さん”の顔を、私がしてた・・・。

だから・・・だから・・・」




号泣しながらシルエットに叫ぶ。




「男の子の“お母さん”には、ちゃんとなれなかったんだと思う・・・!!

ごめんね・・・!!!」




女の私が理想としていた“お母さん”。

“お母さん”がいなかった私が求めていた“お母さん”。




だから、男の子である光一の“お母さん”にはなれなかった・・・。




ちゃんと、なれなかった・・・。




布団を被り号泣していると、布団の上から大きな笑い声が聞こえてきた。




「相変わらず泣き虫だな、桃子。

布団が濡れるだろ、お漏らしかよ。」




「うるさい・・・!!」




「よく頑張ったと思うぞ、泣き虫桃子が。

よく頑張って、“お母さん”やってたと思うぞ。」




「でも・・・ちゃんと、“お母さん”になれなかった・・・!!

どこの世界に息子とセックスする“お母さん”がいるの・・・!?」




「俺、“お母さん”として桃子のこと見てねーからな。」




「・・・“女”として見てるってこと?」




聞きながら被っていた布団を少しずらすと、シルエットが近付いてきた。




そして・・・




私の布団を剥ぎ取り・・・




私の上に跨がった・・・。




慣れてきた目で見えた光一の顔は、満足そうに笑っていて・・・




そんな笑顔で、口を開いた・・・。




「桃子は“女”でもねーよ。

“お姉ちゃん”だろ?」




そう、口を開いた・・・。




「血が繋がってない姉弟は、結婚出来るからな。」





桃子side.........

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