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「桃子さん!!

お昼ご飯、今日も息子さんと食べてましたね?」




お昼ご飯を食べ終え女子トイレにいると、企画部の女の子達が声を掛けてきてくれた。




「みんな~・・・めちゃくちゃ久しぶりに感じる~!!」




泣きそうになりながらそう言うと、女の子達も泣きそうな顔になった。




「桃子さんいなくてヤバいです~。」




「なんで急にいなくなっちゃうんですか~。」




「桃子さ~ん・・・っ」




「・・・そして、息子さんを紹介してくださ~い!!」




「それが目的で声掛けたなー!?」




最後に私が突っ込むと、女の子達がキャッキャと笑った。

その可愛い女の子達を見ながら私も笑う。

久しぶりに、こんなに笑う。




「でも、息子さん相当なマザコンらしいですね!?」




その言葉には吹き出して笑ってしまった。




「なんか、そうみたいで。

育て方間違えたかも・・・。」




「え~、でも、私もお母さん大好きだしな~。」




「私も!」




「それくらい良いお母さんなんじゃないですか?」




“どこの世界にお母さんにセックスまでしてくる息子がいるんだ。”




その言葉をグッと飲み込んで、女の子達に笑い掛けた。

こんな女の子達なら嫁に連れてきて貰ってもいいなと、思いながら。




「本人には聞けてないんだけど、息子、年下の可愛い彼女がいるみたいよ?」




「え~!!!しかも、年下か~!!!」




女の子達の嘆きを聞きながら、私は笑う。




「嫌な姑にならないように気を付けないと。

自分が女だから、男の子って難しくて。

小さい頃はまだよかったんだけど、高校の時の反抗期とかヤバすぎたし。

そしたら今マザコンになってるし、なんなのもう!!って感じだよ。

あんなにマザコンだと彼女に振られるんじゃないか心配しちゃうよ。」




「彼女と別れたら、即、教えて下さ~い!!」




「了解です。」




女の子達にそう返し、みんなで笑った。







その日の夜・・・




リビングに隣接している畳の部屋で布団で寝ていると、玄関が開く音が聞こえた。

時計を見てみると夜12時を回っている。




理子は豊の家で寝ているだろうし、光一の方かなと思い・・・起き上がることなくそのまま目を閉じた。




そしたら、足音がリビングに入ってきたのが分かり・・・




「・・・寝てる?」




「寝てる。」




私が答えると、光一が笑った。




「お帰りなさい。

仕事本当に大変そうだよね。」




「ただいま。

でも、すげー楽しい。」




「・・・これまで、苦しかった?

ごめんね・・・私、光一にとって“お母さん”になれなかったんだろうね・・・。

だから、セックスなんて私と出来ちゃうんだよ・・・。」




私がそう言うと、光一がドカッと目の前に胡座をかいて座った。

暗い部屋の中、大きなシルエットだけが見える。




そのシルエットが喋る。




私に、喋る。




「桃子だって、俺を息子だなんて思ってないだろ?」




そう、喋る・・・。

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