7
金曜日、朝・・・。
白いトップスと濃いグレーのパンツスーツを着ていく。
1サイズ上のスーツを。
薄化粧をした顔を見ながら、黒い髪の毛を鏡の前でアップにしていく。
そんな時、見えた・・・。
「白髪・・・。」
髪の毛の分け目に白髪を見付け、笑った。
でも、鏡の中の私は泣きそうな顔をしていた。
その白髪を隠すことなく、髪の毛をアップにしていく。
その時、洗面所の扉がガチャ────....と開いた。
気を引き締めてそっちの方を見る。
そして、入ってきた息子に笑い掛ける。
「おはよう!!」
「おはよう。
・・・そんなにダサいスーツどこで売ってるんだよ。」
朝からそんな小言を言われ、私は笑った。
鏡の中の私も笑えていた。
「ダサくていいの!!
シングルで2人の子持ちのババアが張り切ってる方が余計なこと言われるだろうし、ダサい方がいいの!!」
「化粧もちゃんとしろよ、幸薄い顔させやがって。
顔が整ってる分、怖いだろ!!」
「そう見えるようにメイクしてるからいいの!!
家事に子育てに疲れきったババアの顔でいいの!!」
「家事したことねーだろうが!!
なに盛ってるんだよ!!」
「それは・・・申し訳ありませんでした・・・。」
私は家事が出来ない。
出来ないというよりも、しようとしていたらこの目の前の息子がやってくれた。
その後は・・・
「おっはよ~!!
・・・お母さん、そのスーツ、センスがオバサン!!!」
娘も洗面所に入ってきた。
隣に住む家の息子と大学4年生にして婚約をした娘が。
隣に住む家の娘が我が家の家事もしてくれるようになり、その娘が結婚をして家を出た後は我が家の娘が家事をしてくれている。
「私、家事出来るようになろうかな・・・。」
「仕事辞めてからでいいんじゃない?」
「それだとお母さんが60歳過ぎてからだけど!!」
「それからでいいでしょ、ボケなさそうでいいじゃん。」
娘の理子に今からボケの対策を考えて貰い、笑いながら洗面所を出た。
「光一、今日出勤遅くない?大丈夫なの?」
ボクサーパンツ1枚で家の中をウロウロとしている光一にバッグを持ちながら聞くと、光一はキッチンでプロテインを飲みながら私の方を見てきた。
「今日は会社に出社してからなんだよ。
金曜日は毎週会社でミーティングがある。」
「そうなんだ、出向先の会社ここから近い駅でよかったよね。」
今年の1月から製薬業界トップの加賀製薬に転職をし、人事部に配属をされた光一。
今は勉強の為に、ナイトメディカルケア・コンサルティングという会社に出向している。
「今度お兄ちゃんにもカメラ密着したいんだけど、ダメ~?」
加賀製薬の広報部でアルバイトをしている理子が私に聞いてきた。
それに私は笑いながら首を横に振る。
「光一の仕事は社外秘どころか社内秘なことも多いだろうし、ダメじゃない?」
「え~・・・。
お兄ちゃんをアップすると絶対話題になるのにな~。
顔だけは良いし。」
「身体も良いだろ!!」
光一が理子に突っ込むと、理子が「キモッ」と更に突っ込んだ。
そんないつもの我が家の朝に笑いながら、私は会社へと向かった。
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