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「黒住さんって、再婚しないんですか~?」




私の歓迎会、お座敷の個室で目の前に座るレイラと希奈が目の奥が笑っていない笑顔で聞いてきた。




私の隣に座る男の子のことをチラッと見ながら・・・。




「再婚ね~・・・。

私、子ども2人いるしね。

あと、酒呑みだし。

むしろ、こんなんで結婚出来るのかな?」




「良い人だな~とは思いますよ~。

前の旦那さんの連れ子を育てたのは。」




「しかも、その時まだ高校生の歳だったんですよね?

前の旦那さん・・・凄いですよね、高校生の女の子相手に。」




女の子達がそう言って、攻撃ではないように気を付けながら私に喋ってくる。




「そういうのもあるしね。

それに、私は子どもが1番だから。

子どものことが1番好きなんだ、私。」




そう答えた私に、女の子達は明らかに少し安心したような顔になった。




「黒住さん、良いお母さんっぽい感じはします~!!」




「企画部の同期達も、黒住さんは企画部のめっちゃ良いお母さんって言ってて!」




レイラと希奈がそう言った後、私の隣に座る男の子の方を見た。




運ばれてきたサラダをテキパキと小皿に取り分けている男の子に。




「凄~い!!そういうことも出来る男子なんだ!!」




「手慣れてるね~!!」




女の子達がキャッキャと笑う中、男の子は1番先に私に小皿を渡してくれた。

課長という役職もあるし、このテーブルでは私が1番お偉いさんになるから。




男の子にお礼を伝えて小皿を受け取ると、男の子が爽やかな笑顔で笑った。




「女の子には優しくするよう、昔から母に言われているので。」




そんなことを言いながら、私のことを見詰めてきて・・・




「僕、黒住さんのこと本当に本気で好きですからね。」




と・・・。




「それは嬉しい、ありがとうね。」




私は笑いながらサラダを食べ始める。

サラダだけを見て、食べ始める。




「・・・凄いですね~、黒住さん。

こんなに若い男の子からもモテモテで!」




「社内の男性陣達、仕事が出来るような男性社員はみんな黒住さんのこと狙ってますからね~。」




「黒住さんのどういう所が惹き付けるんだろう?

うちらまだ小娘過ぎて・・・。

どういう所が好きなの?」




レイラが目の奥は笑っていない笑顔で男の子に聞いたのを、サラダから視線を上げて見る。




気を引き締めながら、見る。




そしたら、隣の男の子から視線を感じた・・・。




私の横顔を見ているであろう視線が・・・。




そして・・・




「守ってあげたくなるじゃないですか、黒住さんって。」




と、言った・・・。




そんな言葉に、私は苦笑いをする。




「え!?黒住さんって守ってあげたくなるの!?」




「それは全然分からないや、めっちゃ強そうだし!!」




「実際強いし!!」




レイラと希奈が地声であろう声で大きく喋り、男の子の方を見ている。




男の子はそれに笑いながら続ける。




続けてしまう・・・。




続けてしまった・・・。




「血も繋がらない、戸籍上も関係ない、そんな子どものお母さんになると決めた女の子なんて、守ってあげたくなるじゃないですか。」




そう、続けてしまった・・・。




「でも、前の旦那さんの子どもならそういう人もいるんじゃない?」




レイラが鋭い目でそう言ってきたので、私は口を開いた。

口を開いたけど・・・




私よりも先に男の子が口を開いた。




「黒住さんに前の旦那なんていませんよ?

1回も結婚したこともなければ、その子ども達の父親とも恋人関係じゃないですよ。

その子ども達に残されていたのは母親の方で、父親はその母親よりも前に死んでいるので。」




そんな言葉に女の子達が絶句する中、私は片手で頭を抱える。




そう勘違いしてくれていた方が楽だったので訂正してこなかった本当のことを、この男の子が喋ってしまった・・・。




「血も繋がらない、戸籍上も関係ない、そんな子どものお母さんになると決めた高校生の女の子。

それも高校1年生でしたからね。

そんな女の子、守ってあげたくなりますよね。」




人事部、社内組織の構築・再編、人材育成担当にいる男の子。

人事部の他の担当よりも詳しい社員情報を持っている男の子が・・・。




言ってしまった・・・。




本当のことを、言ってしまった・・・。

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