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カラフルで可愛い花束を片手に持ちながら自分の席へと歩いていると・・・
「死神がブーケ持ってる・・・っ」
「死神がブーケはウケる・・・っ」
「長峰さん、わざとかな!?」
「後ろ向きながら投げたのに狙ってたなら、ブーケトスの天才!!」
お酒が入っているからか、長峰と宝田の同期くらいの女の子達の席からそんな声が聞こえてきた。
それを私は聞こえないフリをして通り過ぎ、自分の席へと座った。
そのタイミングで会場のスタッフが来てくれ、ブーケの処理を何やらしてくれ袋に入れて再度渡してくれた。
それにお礼を言ってから、カラフルで可愛いブーケを受け取り笑顔になった。
自然と、笑顔になった。
そしたら・・・
「黒住さんに真っ直ぐ落ちてきましたね、それ。」
隣の席に座る、人事部にいる男の子に話し掛けられた。
「ね、ビックリしちゃった。」
「次は黒住さんの番らしいですよ?」
「そうらしいね、最後まで気を抜かないでいかないと。
2人の子持ちで酒呑みでもいいっていう男に声を掛けて貰えるかもしれないし。」
そう言いながらブーケを引き出物の袋に入れて、お酒を呑む。
そんな私の姿を人事部にいる男の子が横から見てきて・・・
「子持ちでも酒呑みでも黒住さんのこと好きなので、僕と結婚します?」
そんなことを言ってきた。
8歳も年下の男の子からそんなことを言われ、私は笑った。
「そういう冗談はやめてよ。」
そう言ってからお酒を一気に呑み、またオーダーをした。
「冗談は黒住さんの名前くらいでしょ。
黒住桃子とか、黒いんだか桃色なんだか。」
「黒いんじゃない?
私って死神だし。」
「怖いっすよね~。
黒住さんに何かしらの攻撃をすると、その社員は降格か支社か子会社に飛ばされるらしいっすね~。」
今年24歳になった人事部にいる男の子が、急にそんな口調でそんなことを言ってきた。
そんな、本当のことを言ってきた。
黒住桃子、来年の3月で32歳。
2人の子持ちである私は、死神と呼ばれている。
「僕じゃダメですか?
黒住さんの相手。」
そんな死神に、24歳のピッチピチな男の子がそう言ってくれる。
年下の可愛い彼女がいるという男の子が、こんなババアにそんなことを言ってくれる。
それにありがたく思いながら、私は笑った。
新しく来たお酒を一気に呑んだ後に、笑った。
「本気じゃなくてもそう言って貰えるのは嬉しいよ。
でも、そんなことまでしてくれなくていいから。」
そう言って、笑った。
そこくらいまでは覚えている・・・。
そこくらいまでは、ハッキリと覚えている・・・。
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