死神にウェディングドレスを

Bu-cha

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9月末・・・




自分の目の前にストン────....と落ちてきた、まるで吸い寄せられてきたかのようなカラフルで可愛い花束・・・。

それを両手でキャッチした・・・。




ブーケトスにより、花嫁さんから投げられたブーケを・・・。




私がキャッチをしたことにより、私の周りにいた女の子達は微妙な空気になった。




「せんぱ~い!!

次はせんぱいの番ですね!!」




この披露宴の主役である花嫁、マツイ化粧品のダブル代表の1人、その社長の第二秘書をしている長峰。




「先輩、俺の学生時代の先輩とかもいるのでここも出会いの場ですからね!!

気を抜かないでいきましょう!!」




長峰の隣に立つ新郎は、マツイ化粧品のダブル代表のもう1人、その社長の第二秘書である宝田。




この2人が新卒の時は、私が教育担当をしていた。

新卒の頃から犬猿の仲の代表のようなこの2人。

当時の社長が会長職となり、代表取締役はダブル代表とした。

この2人がそれぞれの社長の秘書となったのは今年の4月からのこと。




つい先日まで犬猿の仲だったはずなのに、突如結婚を発表。

その1ヶ月後の今日は挙式まで挙げている。




企画部の課長をしている私は、2人の教育担当だったこともあり企画部を代表して招待してくれた。




そんな2人に複雑な気持ちになりながら笑い返していると、司会の女性がマイクを持ってにこやかに私の元へ来てしまった。




そのマイクに向かって私は口を開く。




「子どもが2人いるので、それでも良いと思ってくれるような方がいれば、次は私の番になれるかもしれませんね。

今日は最後まで気を抜かないでいこうと思います。

2人の教育担当をしてた時はめちゃくちゃ大変だったけど、こうして2人の1番幸せな場に立ち会えて感無量だよ、おめでとう!」




私がそう喋ると、周りの女の子達の空気も少し和らいだ。




長峰と宝田の間に立ち、カラフルで可愛い花束を両手で持ちカメラマンに写真を撮られる。

それを出席者全員に見られる。




真っ白なウェディングドレスとタキシード姿の2人の間に、真っ黒な私。

1サイズ上の黒いパンツドレスに黒いパンプス、黒い髪の毛はアップにしているけれど、結婚式と披露宴の出席なのに薄化粧。

真珠のネックレスだけが光るような姿。




そんな姿で笑っている姿を写真で撮られ・・・




私は笑いながら小さな声で2人に言う。




「何があったのかは聞かないけど、もっとしっかりと笑いなさい。

見る人が見れば分かる。

社内だけじゃなくて取引先まで大々的に呼んでの結婚式。

不満タラタラな顔をしてたら台無しだからね。」




「「・・・了解です。」」




新卒の頃から毎回のように言葉が揃う2人に笑うと、2人も面白そうな顔で笑いだした。




「突然だったのによく人数集められたね?」




「「片っ端から声掛けまくりましたからね。」」




「あと数時間、気を抜かないでいきなね。」




「「了解です。」」




仲が悪いんだか良いんだか分からないような2人に笑いながら、自分の席へと戻る為に歩き始める。




「せんぱい、せんぱいも楽しんでくださいね!!」




長峰が私の背中に声を掛けてくれ、少し振り返りながら笑った。




「お酒、浴びるように呑んでいく!!

2人の子持ちで酒呑みの女でも良いって思ってくれる男がいるかもしれないしね!!

最後まで気を抜かないでお酒呑んでいく!!」




「「せんぱ~い・・・!!」」




2人の声を背中に聞きながら、笑いながら歩き出した。

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