3

ビジネスホテルであろう一室の中、カーテンも閉めていない窓から10月の朝の光が入ってきていて・・・




ズキズキと痛む頭で必死に色々と思い出そうとする。




でも、思い出せるのはそこまでで・・・。

ハッキリ思い出せるのは、そこまでで・・・。




ぼんやりと思い出してしまうのは・・・




思い出してしまうのは・・・




必死に抵抗したけれど、ほぼ無理矢理されてしまったということ・・・。




裸のままの自分の姿に愕然としながら、私は掛け布団をまくりシーツを覗いてみる。

処女ではないので血が出ているわけでもなく、ぼんやりとした記憶が本物なのかも分からない・・・。




隣には誰もいなくて、浴室からはシャワーの音が聞こえてくる・・・。




片手で頭を抱えながら、今日が日曜日なことに少しだけホッとする。




少しだけホッとした状態で、昨晩はシャワーも浴びていないであろう身体に急いで下着やパンツドレスを身に付けていく。




そして部屋の鏡を見てみると・・・




薄化粧がドロッと崩れた化粧がのっている顔面が・・・。




汚いババアの顔面が写り込んでいる。




「この歳で化粧も落とさず寝るとか最悪・・・。」




少しだけ笑ったつもりだったけど、鏡の中の汚いババアは泣きそうな顔をしていた。




その顔から視線を逸らした時・・・




ガチャ──────....と、浴室の扉が開いた。




その音を聞いて、私は気を引き締めてそっちを見る。




そしたら、出てきた・・・。




出てきた・・・。




昨日の披露宴で私の隣の席に座っていた、人事部にいる男の子が・・・。




バスタオルで頭を拭きながら、何も身に付けずに出てきた・・・。




その姿から視線を逸らすことなく男の子を見ていると、男の子は裸のまま私の方を向いた。




そして、私の顔をジッと見詰めてくる。

こんな汚いババアの顔を、見詰めてくる。




「おはよう。」




普通に挨拶をされたので、私も「おはよう。」と普通に挨拶を返した。




「よく覚えてないんだけど、したの?」




私が聞くと男の子は普通の顔をして頷いた。




「した。」




「避妊は?」




「した。」




“年下の可愛い彼女はどうするんだ、悪ガキ。”




という言葉はグッと飲み込んで、また口を開く。




「溜まってたの?」




そう聞いてみた私に、男の子は真剣な顔で私のことを見てくる。

バスタオルを肩に掛け、裸のまま・・・。




そして、口を開いた。




「好きだからやった。

俺、桃子のことが好きなんだけど。」




そんな言葉に私は頭を片手で抱える。

ズキズキと痛むのは二日酔いのせいだけではない。




「ありがとう、それは嬉しい。

でも、こんなことまでしてくれなくていいから。

身体張って、こんなことまでしてくれなくていいから。」




「好きな女とやれるなら、下半身張るだろ。」




そんな返事をしながらボクサーパンツを履き、スーツを着ていく。

その大きな背中を見詰めながら、聞いた。




「帰るの?」




「これから仕事あるから会社行ってくる。」




「分かった、私は帰るから。

仕事頑張ってね。」




お財布からお札を抜いて、男の子が羽織ったスーツのジャケットのポケットに差し込む。




それから、バッグと引き出物の袋を持ち部屋の扉から出た・・・。

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