第14話 胡蝶の夢 Scene8

「さっそくじゃが、とおるよ。お主、獏(バク)についてはどの程度知っておる?」

だいだらは、古豪さんの背中を擦りながら問いかけてきた。


恐らくこれから実務担当として、相対するであろう相手の知識を確認するためだろう。



『まぁ、一般程度には知ってるつもりだ。俗に言う人の夢を食べるっていう妖怪、又は怪異だろ?』

俺の知っている、バクのイメージは実際そんなものだった。まさか、動物園に居る方では無いだろうから。



「まあ、期待は知るとらんかったが、そんなもんじゃろうな」

だいだらは、立ち上がると銀髪の髪をフワりとかきわける。


「簡単に言うと獏とは、外来種じゃ」


『外来種?!』

(まさか、動物園の方?!)


「うむ、獏とは元来。中国で生まれた伝説上の霊獣の一種での。麒麟や龍といった魔除けや悪夢を遠ざけるもの同じとされておる。もともと日本には存在しとらん。」


(さすがに動物園の方がでは無さそうだ。しかし、麒麟や龍と同種の存在とは驚いたな。)



だいだらは続ける。



「日本に伝わり口伝されていく中での、この【悪夢を遠ざける】がいわば、伝言ゲームのように変貌していき【悪夢を捕食する】霊獣として定着していった。昔はインターネットなんてもんは無いからのぉ。」


「ゆえに、【悪夢を捕食する】伝えは日本で後天的に備わったこの国ならではのヤツの力みたいなもんじゃろうな。」



生物が住む土地などで姿や特性を変えることは自然界では、至極珍しい事では無い。

すなわち、伝説の霊獣も例外では無いということだろう。



「存在のイメージもしかりじゃ。お主、獏と言ったらどんな姿かたちを想像する。」


突然の質問に、ハッとする。


『いや、さっきも言ったが動物園にいるあの四足歩行の何というか、あの例え辛い感じの、、あれだよ。あの感じだよ、、。』


バクを上手く現す表現する言葉が出ず、しどろもどろになってしまった。


「まぁ、そうじゃろぉ。ある意味正解じゃ。                  獏とは、別の意味で【混ざり物】と言う意味があっての。鼻はゾウに似ていて、身体はサイ、毛色もチグハグ。神により想像された際、数多の動物の余った箇所だけをつなぎ合わせて作ったとされておる。ゆえに、【混ざり物】いわばツギハギだらけと言うことじゃ。」


まさに、俺が上手く表現できなかったイメージそのものだ。



「しかしの、霊獣の獏はあくまで伝説上の生き物で、動物のバクは実は別ものなんじゃよ。後天的にイメージは統一化され今では、ほぼ同義となっておるがの。でも、まぁもともと、霊獣獏の姿かたちが動物のバクと酷似していたなんて話もあるくらいだしの。」




「要はじゃ。今回の獏は、お主のイメージするバクと相違があるやもしれん。気をつけるに越したことはないぞ。」


つまりは、先入観を持つなということなのだろう。



ツギハギ・・・・、前回の旧動物霊園で遭遇した動物の怪異を思い出す。

どうやら最近の俺は、ツギハギに縁があるみたいだ。



「それからの、、、、、」





−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−




その後も、だいだらから 獏についての最低限の知識と、今回の事案でのだいだらの懸念について説明を受けた。








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