第13話 胡蝶の夢 Scene7

すると。だいだらは、自分のおデコを菜乃葉のおデコに数秒程押しあてた。

一瞬、白雪姫のワンシーンが思い浮かびキスでもするのでは無いかとハラハラしたが、すぐに離れ態勢を戻す。



「なるほどのぉ〜」

だいだらは、目をつむり腕を組んで考えるように唸っている。


古豪さんも、心配そうにだいだらを見つめてる。




「何かわかったのか?」

俺はだいだらの神薙だが実際、まだ経験も浅く怪異にそこまで精通している訳では無い。

目下修行中の身なためこういった初見の案件は、だいだらの知識に頼るしかないのだ。


「これはー、あれじゃ・・・夢じゃの。」


『夢?』


「うむ。まぁ、夢を司る怪異はいくつかおるが。」


「これは、獏(バク)じゃな」

現代医学ですら原因の解明が出来なかなったこの症状を、だいだらはあっさりと断言した。


『え、バク?バクってあの動物園にいる?!』


「安心せい。大方、なんとかなるじゃろ。」



「本当ですかっ?!なんとかなるんですか?!この子は目が覚めるんですか?!」

だいだらの言葉に、激しく反応したの古豪さんだった。

だいだらの目線に合わせる様にしゃがみ込むと両肩を掴み同じ質問を何度も繰り返す。

だいだらの頭が前後にグラグラ揺れてる。


「安心せい。大丈夫じゃ。」

「だから、、、お願い、、離して……」

だいだらは、濁すこと無く断言する。



「ほ、ほんとうにぃ?、、、」


一瞬で、気持ちが込み上げてきたのだろうか。先ほどまでの静かで落ち着いた大人の女性から一転、目に涙目を浮かべ、すがりつくように前のめりになっている。

きっと、これまで医療機関からはあまり前向きな言葉をもらっていなかったのだろう。

古豪さんは、だいだらの言葉を噛みしめるようにうずくまり、泣いている。


この【大丈夫】はきっと、悩み苦しんでいる人にはまさに、特効薬になるのだろう。しかも、今回はそんじょそこらの人では無い。山神神社の御神体にして現役の神様からのお墨付きとまできている。




『じぁ。だいだら、宜しく頼む。』

一秒でも早く古豪さんの望みを叶えてやりたいと思い、だいだらの頭にそっと手を載せた。



だいだらは、睨みつけるような上目遣いで答える。


「たわけ。やるのはワシでは無うて、お主に決まっとるじゃろ」





(なるほど、そういう展開か・・・・・)





先ほど、古豪さんの望みを叶えてやりたいと思った手前イヤとは言えなかった。

逆に、むしろ今日はやる気が出ている方だ。



『オーケェ。だいだら、俺は何をしたらいい?』



「おっ。今日は、やけに素直じゃのぉ。その心意気を忘れるなよ。、、、あとその、オーケー!○ーグルみたいな言い方はやめろ。」





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