第10話 胡蝶の夢 Scene4
対象の建物は、いたって普通の一軒家だった。
良くある建て売り販売されるようなモダンデザインな一軒家。
築年数はそれなりに経っているが、外装はまだ綺麗で庭はよく手入れされている。
芝にはエアレーションの後が有り人工芝で無く生芝だと伺える。
総合的に綺麗な家と言った印象だった。
「はよ。入らんか」
だいだらに、お尻辺りを小突かられて一歩前に踏み出す。
『いちよう確認するが、ホントにここであってるんだよな?どう見ても普通の一軒家だぞ?』
これで、いざインターホンを押して関係ない人が出てきたら、完全に俺たちは不審者扱いになりかねない。
「心配症なヤツじゃのぉ。なら自分で確認せい。」
胸元から先ほど突っ込んだA4サイズの紙を取り出し手渡す。
受け取った紙はにわかに温かく、四つ折りになっていた。
開いて見るとやはり、地図が書かれていてここが目的地だと指してる、矢印が一つ伸びていてそこには、【古豪さんの家】と書かれていた。
相対する一軒家の表札を見ると【古豪】と確認できた。
『表札も合っているし、ここで間違いなさそうだな』
今回の仕事場と確認が取れたのでA4の紙を再度、四つ折りにしてだいたらに返す。
だいだらは、受け取るとまた勢い良く胸元に突っ込んだ。
そしてやっと、インターホンを押す。
ピンポーン。
すると、少しの静けさの後で扉の奥に人の気配を感じた。
ガチャガチャ、ガチャッ。
ドアの施錠が解除されると、すぐに扉は開かれこの一軒家の家主と思われる女性が顔を覗かせた。
おおよそ予想はしていたが出迎えてくれたここの家主は、先ほどうちに来ていた女性の人だと人目で分かった。
『山神神社の者で、小巻と言います。古豪さんの御宅で間違い無いでしょうか。』
いちよう、建前として簡単な自己紹介と依頼主の確認作業を行う。
「はい。夜分遅くに、お越し頂き大変感謝致します。どうぞ、中へお上がりください。」
一旦、俺とだいだらはリビングへと通されるかたちになった。
家主の女性は、庭の手入れなどからも感じたように、丁寧な言葉遣いと品の良さを感じさせる大人の女性だった。
「お呼び建てする様な形になってしまい、申し訳ありません。本来は、私共がお伺いしなければなりませんのに・・・。」
『あ、ああ、いえ、お構いなく、、、』
大人に畏まられることに慣れていないせいか、逆に対応に困りしどろもどろになってしまった。
横目でチラリとだいだらを見ると、小さな身体で堂々と両腕を組み黙って女性の振る舞いを静観していた。
このどこでも物怖じしないところは、素直に尊敬せざる負えないと感じる。
「それで、そのお主の娘とやらはどこじゃ。」
早速、だいだらから本題らしきモノへと話の流れを持っていく。
「あ、はい。ありがとうございます。こちらです。」
通されたばかりのリビングを出て、二階へと続く階段を登ると一つの部屋の前まで案内された。
部屋の入口には、お菓子やフルーツを型どったプラスチックのプレートで【なのは】と書かれた札が吊るされていた。
【古豪】という力強い名字に対して【なのは】という柔らかかな名前が上手くバランスを取っているなと観察していると。
ガチャッ。
だいたらは、何の躊躇いも無くノックもせずにドアを開け部屋に入ろうとしていた。
『おいっ、だいだら、、、、』
止めたところで既にドアは開けられ、だいたらは一歩踏み出していた。特に部屋の中からは人の反応は感じられなかった。
どうやら部屋の主は、不在のようだった。
その後、だいだらと古豪さんの後に続いて俺も部屋へと足を踏み入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます