3

翌日・・・




「おいこら、理子!!!」




また朝、お兄ちゃんがノックもなしに“お兄ちゃん”の部屋にズカズカと入ってきてお兄ちゃんと抱き合っている私の腕を引っ張ってきた。




そんな最悪な起こし方をされ、お兄ちゃんを睨み付ける。

そんな私を・・・お兄ちゃんは下まで視線をチラッと移してきて・・・




「お前、毎回そんな格好で兄貴の部屋に入って煽ってるんじゃねーよ!!」




「煽るでしょ!!

私はお兄ちゃんが好きなの!!」




「少しは兄貴の気持ちも考えろ!!

そんな格好されて煽られてたら、それはやりたくなるだろ!!」




「その為にこの格好してるに決まってるでしょ!!

お兄ちゃんって女心が本当に分かってない!!

そんなんだから顔は良いのに彼女出来ないんだよ!!」




「うるせーよ!!

お前の大大大好きな方の“お兄ちゃん”も、彼女いねーだろ!!」




お兄ちゃんからそう言われ、私はムカつきすぎてお兄ちゃんの胸を力いっぱい両手で押した。

当たり前だけど何も動かないお兄ちゃんにそれでも睨み付ける。




「お兄ちゃんに彼女が出来るとか言わないでよ!!!

そんなのお兄ちゃんにはいらないの!!!

私がいるからいらないの!!!」




そう叫ぶ私を、お兄ちゃんは怖い顔をしながら見下ろしてくる。




「お前は妹だろ!!!

でも幸い血が繋がってない兄貴が相手だろうが!!

それならちゃんと男としてこいつを見てやれ!!!

“お兄ちゃんお兄ちゃん”いつまで言ってるんじゃねーよ!!!」




「鮫島君・・・。」




お兄ちゃんにまた口を開こうとした時、“お兄ちゃん”が私のお兄ちゃんのことを“鮫島君”と呼んで、ベッドから立ち上がった。




そして・・・




「最後までは、しないから・・・。

それは、絶対にしないから・・・。」




そんな・・・




そんな、悲しすぎることを言って・・・。




「でも、それ以外なら・・・。

りーちゃんが望むことは、したいから・・・。」




そんな“お兄ちゃん”の言葉に私はショックを受けていると、“お兄ちゃん”は優しい顔で私に笑い掛けてきて・・・




「僕が・・・りーちゃんにとって、“お兄ちゃん”なのは知ってるから・・・。

彼氏とか、男とか、そういうのじゃなくて・・・。

“お兄ちゃん”なのは、分かってるから・・・。」




そんなことを言ってきて・・・




私は、泣いた。




「なにそれ・・・どういうこと!?」




“お兄ちゃん”に向き合って、今度は“お兄ちゃん”を見上げ睨み付ける。




そんな私を“お兄ちゃん”は困った顔で笑っていて・・・




「僕は・・・りーちゃんの“お兄ちゃん”だから・・・。

いつか、りーちゃんが・・・誰か他の男の人を本当に好きになって、彼氏が出来るのは・・・ちゃんと、分かってるから・・・。」




「なに・・・それ・・・。

私は彼氏なんていらない・・・。

お兄ちゃんがいればそれでいいのに・・・。」




「うん・・・。

でも、いつか・・・。

いつか・・・“お兄ちゃん”よりも男らしい彼氏が、きっと出来るよ・・・。

僕は“お兄ちゃん”だから・・・。」




お兄ちゃんは困った顔で・・・でも、泣きそうな顔で・・・




私に、そんな残酷なことを言ってくる・・・。




そんな・・・残酷で、“普通”のことを言ってくる・・・。




そんな“お兄ちゃん”に、口を開いた・・・。




大きく、開いた・・・。




「違うよ・・・!!全然違う!!!

そういうことじゃないのに・・・!!!

私が思ってるのはそういうことじゃないのに・・・!!

何で分かってくれないの!?

何でみんな分かってくれないの!?

私の気持ち、何でみんな分かってくれないの!?」




そう、言って・・・




そう、叫んで・・・。




噛み付いた・・・。




言葉の通り、噛み付いた・・・。




“お兄ちゃん”の腕に、噛み付いた・・・。




なのに・・・




なのに・・・




“お兄ちゃん”は・・・




痛がることもなく・・・




私を引き剥がそうとすることもなく・・・




声を荒らげることもなく・・・




ジッと、動かず・・・




私の背中を、ポンポンッと・・・




優しく叩いてくれる・・・。




そんな“お兄ちゃん”に、口を開く・・・。




また、口を開く・・・。




「私、お兄ちゃんのことが大大大好きなの・・・。

本当に、大大大好きなの・・・。」




鋭い歯ではなく、甘く噛み付く・・・。

甘噛みをする・・・。




「お兄ちゃん・・・私を、戴いて・・・。」




そう、何度でも甘噛みをする・・・。




こんな愛情表現でしか、伝えられないのが悔しいけれど・・・。




それでも、何度でも・・・




何度でも・・・




甘噛みをする・・・。

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