3

お兄ちゃんにお弁当を届けた後、私は自分の家に帰り夜ご飯を食べ、すぐに部屋に入ってパソコンを起動させた。




そして、見ていく・・・。




カメラの中に入れた現実の世界を、見ていく・・・。




カメラの中に入っている現実の世界の真理姉も、やっぱり可愛くて、美味しくて・・・。




その中でも破壊力抜群に可愛くて美味しい真理姉を選んでいく・・・。




そして、私の家族の煩くて幸せでもある時間も・・・。




あとは・・・真理姉の為にも、真理姉の旦那さんが仕事で成功するよう・・・少しだけ、協力してあげる・・・。




でも、決して作り物ではない・・・。




“リアル”を詰め込む・・・。




その“リアル”に、人は何よりも惹き付けられ・・・




納得させることが出来るから・・・。




そう思いながら・・・




そう感じながら・・・




今日も『可愛くて美味しい私のまり姉』を編集していく・・・。




胸にはボロボロになった茶色いノートを抱き締めながら・・・。




真理姉や家族から頂いた“リアル”を、編集していく・・・。





「ただいま~!理子ー!!!」




しばらく編集をしていたら、お母さんの声が玄関から聞こえた。

そして、ノックもなく私の部屋のドアを開けてきて・・・




「私の後輩に、オバサンとか言わない!!!」




と、めちゃくちゃ怒った顔で私の部屋に入ってきた。




そんなお母さんをチラッと見てから、私はまたパソコンの方を向く。




「ババアって言わなかっただけ、褒めてよ。」




「“ババア”だけは言わないでって小さな頃からお願いした甲斐があったね!

・・・じゃなくて、誰にでも噛み付かない!!

あの子は凄く良い子だし、オバサンでもないし、理子が噛み付く所あった?」




「私のお兄ちゃんと並んで歩いてた!!」




「・・・なるほどですね。

もう二度と並んで歩かないよう、私から伝えておきます。

並んで歩かず、1メートルは距離を取るのはいかがでしょうか?」




そう言われ、少し考えて・・・




「それならいいよ。」




そう答えたら・・・




私の頭にポンッと手を置いてきた。




「ピンク色の鮫ちゃんは、今日も誰かに噛み付きましたか?」




「・・・大学でも少し。

あとは・・・昨日だけど、会社でオバサン達に噛み付いた。

だって、お兄ちゃんとのことで余計なお世話なこと言ってきたから。」




「明日もバイトでしょ?

ちゃんと話してくるんだよ?」




「うん・・・。」




そう答えてから、泣いた・・・。




そんな私の頭を、お母さんはポンポンッと強めに叩いてきて・・・。




「現実世界は厳しいよね~!!

分かるよ~!お母さんもそうだから、分かるよ~!!

ほんっとに厳しいんだよ!!

でも・・・まだ生きてるからね!!

生きてる限りは、どうにかしてこの厳しい世界で生き延びよう!!」




「うん・・・。

私はただの鮫じゃなくて、ピンク色の鮫だから・・・。

だから・・・他の魚とは生きていけなくても仕方ないの・・・。

普通の鮫とも生きていけないくても仕方ないの・・・。」




小さな頃からお母さんに言われている言葉を自分でも言う。




「でも、まだ生きてるから・・・。

珍しいピンク色の鮫を悪い誰かに捕まえられてしまわないように、波を荒立てないで泳ぐの・・・。」




「そうだね。

そうすれば悪い誰かに見付からない。

捕まえられて、痛め付けられない。

でも・・・」




お母さんが言葉を切った・・・。




そして・・・




「「守る為には、戦う。」」




お母さんと言葉が重なり、お母さんを見上げた。

お母さんは優しいだけではなく、強く惹き付けてくるような笑顔で私を見下ろす。




「ピンク色の鮫を普通の鮫にしようとしてくる奴なら、噛み付いてでもピンク色を守っておいで。」




そう、今日も言ってくれて・・・




泣いた・・・。

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