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「お兄ちゃん、最悪なんだけど!!」




高級マンションの最上階、結婚した真理姉が住む家に、大学が終わった後に大急ぎで向かいそう愚痴った。




カメラを片手に真理姉が料理を作る姿を撮っていくけれど、私が話しているのでここは編集でカットをする。




私が高校3年生、真理姉が23歳の歳に私は動画配信を始めた。

チャンネル名は『可愛くて美味しい私のまり姉』。




美容系動画だけれど、スキンケアやメイクや身体ケアだけではなく、真理姉が作る料理や真理姉の恋愛話、そして私達家族の団欒のシーンも入れている。




今では登録者数100万人を超えている人気動画配信者になっている私。

“可愛くて美味しい真理姉”をテーマに、真理姉の“リアル”を詰め込んだ動画。




私の大好きな、可愛くて美味しい真理姉。

お母さんには申し訳ないけれど、お母さんは“お父さん”みたいな存在で。

私にとっての“お母さん”は真理姉だった。




いつも一緒にいてくれて、優しくて温かくて・・・でも、私がしっかりしないといけないと思わせる。

他のどんなお母さんよりも可愛くて、美味しい物を作ってくれる私の真理姉は、私の“お母さん”でもあった。




そんな真理姉が、素顔のままの姿で料理をしながらクスクスと可愛く笑っている。




学校から帰りお母さんとキッチンで話す女の子のように、私は今日も真理姉と話す。




カメラを回しながら・・・。




このカメラの中に、現実の世界を入れていく・・・。




「理子は、豊のことが大好きだもんね・・・。

ありがとう・・・。」




真理姉が今日もそう言って、カメラを持つ私の方を見てくれた。




「だって、この真理姉の弟だよ!?

それは好きになるでしょ!!

もうね、大大大好きだもん!!」




今日も私がそう言うと、真理姉はまたクスクスと笑っている。




「でも、彼氏と彼女には・・・ならないんでしょ・・・?」




「彼氏と彼女になんてなりたくない!!」




「いつも聞いてるけど・・・どうしてだろう・・・?」




今日もそう聞かれ・・・私は少し考えて・・・




「分かんない・・・。

でも、彼氏と彼女なんて嫌だ。

私はお兄ちゃんと妹で結婚したい。」




「豊・・・彼氏と彼女じゃないから・・・悩んでるんだとは思うよ?」




お姉ちゃんが言うとおり、お兄ちゃんはそれで悩んでいるんだと思う。

それで先には進んでくれないんだと思う。




それは分かる。




それは分かってる・・・。




頭では、分かってる・・・。




でも・・・




でも・・・




「どうしても、嫌・・・。

だって、お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん・・・。

私が大大大好き好きなのは、お兄ちゃんなんだもん・・・。」




「そうだよね・・・。

豊も、そんな理子が大大大好きなんだと、思うよ・・・。」




お姉ちゃんがそう言ってくれて、私は頷きながら少しだけ泣いた・・・。




そして、それから聞いた。




「この唐揚げ、少し貰って帰ってもいい?」




「うん・・・!その為に、多めに揚げたの!

理子の会社の副社長さん・・・小町さんから教えて貰った唐揚げ・・・!」




真理姉がそう言って笑って、大きなタッパーを取り出してくれた。

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