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「・・・お前らっ待て待て!!!」




「「待ちませんよ!」」




社長さんの焦った声に矢田さんと2人でそう返した。




あの後、社長さんに連れてこられた場所。

矢田さんの家の最寄り駅、そこにあるいつも並んでいる焼き肉屋さん。

予約席は数ヶ月先まで埋まっているし、予約席以外の席は長い時間並ばないと入れないお店。




そこに本当に入れてしまった・・・。




そんな凄い社長さんが焦った様子でトングをアワアワと動かしている。




「お前ら、がっつき過ぎだろ!!

いくらでも頼んでいいから俺にも食わせろって!!」




さっきから何も食べられていない社長さんがまたそう言っている。

それに何も返事をせず、矢田さんも私も自分の肉に集中する。

矢田さんとはやり合うだけ疲れるので、お互いに自分のペースで肉を焼いていく。




「・・・お前ら、譲り合いの気持ちとかどうした?」




社長さんが大笑いした後、諦めたのかトングを置いてお酒やおつまみを食べていく。




カルビと白米を食べて、食べて、食べて・・・

やっと少しだけ落ち着いたので両手で持っていたトングとお箸を下ろした。




そのタイミングで・・・隣に座っていた矢田さんもお箸を下ろしたのを把握した。




そして、私は生ビールを一気に飲んでいく。




一気に、飲んでいく・・・。




そして、ジョッキをテーブルに置いて・・・




「ここ、美味しすぎますね~!!!

全然止められませんでした!!!」




「止める気なかっただろ!!」




社長さんに突っ込まれると、矢田さんが面白そうに笑った。




「あ、社長さん食べて下さい。」




「お前ら見てたらそれだけで腹一杯だよ・・・。

俺もうオジサンだから見てるだけで辛くなってきた・・・。」




そんなことを大真面目に言っていて、自然と笑ってしまった。




「いいじゃねーか、そうやって笑ってた方がいくらか可愛いぞ。」




「・・・いくらかですか?」




「いくらかだな。」




そんなことをサラッと言ってきて・・・




「中身、“女の子”じゃねーからな。

副社長さんの直属の部下なんだろ?

あの人“すげー良い女”とも言えないようなすげー人だったな、久しぶりにビビった!!」




そう言ってきた社長さんを真っ直ぐと見る。

社長さんも私を真っ直ぐと見てきた。




「あの副社長さんも絶世の美女みたいな見た目で、中身は“女性”じゃないだろ。」




「小町さんは可愛いですよ?

ツンケンしてたんじゃないですか?

私の前ではいつも可愛いですけどね。」




「あの人を可愛くさせる部下、すげーな!

副社長さんといつから知り合いなんだよ?」




また来た生ビールを一気に飲み、それから答えた。




「私が小学校6年生の時から知り合いでした。」




そう答えたら・・・




何故か隣に座っていた矢田さんが咳き込み、むせている。




「大丈夫ですか?」




「・・・いや、え・・・!?

副社長さんと小学校6年生から知り合いなの!?」




「そうですけど・・・。」




「・・・マジか。」




そう呟いて矢田さんが項垂れていて。

それに首を傾げながら社長さんの方を見る。

社長さんは大笑いしながら残っていたカルビを食べ・・・




「カルビ、こんなだったか・・・?

俺今何歳になったんだよ・・・。」




と、自分の年齢についてそんなことを言っている。

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