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「的場さん、ちゃんと見てますか?」
15分間隔の面接。
2時間程度に1回だけ15分の休憩がある。
今日も17時半になり休憩があり、派遣さんからそう聞かれた。
「見てます。」
「何を見てますか?」
「面接の進め方や面接を受けている人の様子やその人に対する合否です。」
私がそう答えると派遣さんは私のことを少しだけ長めに見てきた。
爽やかな笑顔でもなく・・・
覇気というか・・・
そんな空気を放出してくる・・・。
“勝てない”
そんな風に思ってしまうような空気を・・・。
「集中しましょう、的場さん。
目で見るのは止めてください。
五感で見てください。」
そんなアドバイスには苦笑いをしてしまった。
「破天荒な面接の見方ですね。」
「そうですか?」
派遣さんが不思議そうな顔で私に聞いてきた。
その爽やかな顔に微笑み返す。
そんな私に派遣さんが困り顔で笑った。
そして・・・
「的場さんって可愛いよね。」
と・・・。
「全然可愛くないですから。」
「いや、可愛いでしょ。
社内の人から人気だと思うよ。
同期とかは?言い寄られるでしょ?」
「言い寄られますね。」
本当のことを答えると派遣さんが面白そうに笑った。
「でも、私は全然可愛くないので。」
「可愛いから言い寄られてるんじゃないの?」
「そうなんですかね?」
そんなつまらない話を派遣さんと少しだけして、また面接が始まった。
こういう話は苦手なのに、この派遣さんはいつもいきなりしてくる。
それまで何の動きもなかったのに、いきなり。
「明日の土曜日、夕方で一旦面接終わるしご飯でも行かない?」
面接が終わった瞬間、いきなり、そんな誘いをしてきた。
それに微笑みながら首を横に振る。
「五感で見た結果、“✕”でした。」
.
20時前に30分間の休憩時間に。
何処かに電話を掛けている派遣さんにお辞儀をしてから、面接の部屋を出た。
部屋を出てから人事部の部屋に向かっていると・・・
「的場さん!差し入れ!!」
と・・・。
同期の男子2人がビニール袋を渡してくれた。
それを受け取り微笑む。
「嬉し~い!!ありがとう!!」
「あの派遣社員、的場さんに無理させ過ぎじゃない?
夜中まで2人で面接してるんでしょ?」
「うん、1番遅くて深夜2時があったかな。」
困った顔で微笑んだ。
「でも、派遣さんが頑張ってくれてるのに正社員の私が頑張らないわけにいかないしね。」
「それにしても、その時間だと社内で2人きりなんだよね?
同期みんな心配してるから!!」
「ありがと~!!
でも、私強いから大丈夫!!」
「酒は強いけどな!!!」
同期2人が楽しそうに笑っている。
それに私も微笑みながら笑う。
「的場さん可愛いし小柄だからマジで気を付けてね!!」
「うん、ありがとう!
・・・でもあの派遣さん、あんなに見た目も良いから女の子に困ってないでしょ!!」
「・・・そうか~?
男で派遣だし、何か訳ありなんじゃない?」
それには私も何も言えなくなる。
仕事も出来るようなのに、何故か派遣をしている。
「とにかく!何かあったら連絡しろよ!!」
そう言って、同期2人が帰っていった。
昨日は他の同期にも声を掛けて貰った。
女の子とも仲良くしているけど、同期の男子数人は完全に私を女として好きなようで。
メッセージも頻繁に送られてくるし、動きの様子が完全にそうで。
それに今日も苦笑いをしながら受け取ったビニール袋を手に人事部の部屋に入る。
中身を見てみると、サンドイッチやヨーグルトやジュース。
それと甘いお菓子まで。
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