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「ご飯食べられましたか?」
面接の部屋にまた戻ると、11月なのに部屋の窓を少し開けた派遣さんが聞いてくれた。
「はい、サンドイッチを・・・」
そう答えてから、私は派遣さんの姿を凝視してしまう・・・。
だって・・・
だって・・・
「俺、今日は牛丼テイクアウトしちゃいました!!」
牛丼を食べていた。
派遣さんが牛丼を食べていた。
「少し食べます?
大盛りなのでいいですよ。」
細マッチョの良い筋肉なのがスーツを着ていても分かる派遣さん。
そんな派遣さんが牛丼を美味しそうに食べている・・・。
窓を少し開けていても牛丼の美味しそうな匂いが・・・。
その匂いに刺激をされ、口内には大量に唾液が分泌されていく。
「・・・つゆだくですか?」
「つゆだくですね。」
「少し・・・一口、いいですか?」
「いいですよ。」
派遣さんが面白そうな顔で笑いながら、隣に座った私に牛丼とお箸を渡してくれた。
派遣さんも使っていたお箸だしそれには一瞬だけ悩み・・・
でも、派遣さんの食べ掛けの牛丼を貰うわけなので、そんなことを気にしていたら食べられない。
米が食べたかった。
私は米が食べたかった。
そして、肉・・・。
米と肉が食べたかった・・・。
米と肉があれば他には何もいらない。
米と肉があれば満足出来る。
逆に、米と肉でなければ満足出来ない。
目の前の牛丼を、五感全てで見て・・・
五感全てで感じて・・・
派遣さんのお箸で、派遣さんの食べ掛けの牛丼を・・・
食べた・・・。
食べた・・・。
食べた・・・。
牛丼を、食べた・・・。
米と肉を・・・。
米と肉を・・・
食べて・・・
食べて・・・
「・・・やめ!!!」
覇気のある大きな声が響いた。
その声に反射的に止まった。
「食べ過ぎだから!!
俺のなくなっちゃう!!!」
慌てたような、少し怒ったような声で派遣さんが私が持っているお箸を握ってきた。
牛丼が入っている器まで握られ・・・
「あと一口だけ~!!!」
「一口だけって言ったのに、もう半分以上食べてたよ!?
何言っても一心不乱に食べてたからね!?
夜ご飯食べたんだよね!?」
「食べたんですけど、あと一口だけ!!」
「俺この後、城での面接もあるから!!」
派遣さんが急に“城”なんて言い出した。
それには首を傾げて派遣さんを見る。
「今日は向こうで深夜に面接しないといけないから、ちゃんと食べさせて!!」
派遣さんが必死な様子でそう言うので、お箸と牛丼の器をパッと離す。
それに派遣さんはホッとしたような顔をして・・・
「明日、焼き肉でも食べに行く?
奢るよ!」
「行きましょう・・・。」
「夜の面接、面接官2人とも臭かったって言われないといいけどね!」
派遣さんが楽しそうに笑いながら、残りの牛丼を食べていく・・・。
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