切られた身の上
刺身を醤油に漬けるにあたって出汁粉末をかけながら思った。
この時いったい刺身は何を考えているのだろうか?
自分だって十分な旨味があるはずなのに他所からそれも同じ魚からとった出汁をかけようなんてひどい侮辱じゃないかそんなふうに思っているのかもしれない。
この問題にはきちんとした答えがある。だからどうかあなたも真面目に考えて欲しい。
三十分時間を上げるので集中して考えてください。そして真剣に考えに考え詰めて三十分後につづきを読んでください。
さあ考えましたか? 考えてませんね。考えてるわけがありません。
こんな問いかけに三十分も真面目に考えようなんて馬鹿のすることだとあなたは思うことでしょう。
その通りです。
けれども発想を逆転させてみましょう。あえて馬鹿なことを三十分かけてやるのです。
どうせあなたの三十分なんてたいした価値のあるものでもないんですから投げ捨てたところで何の問題もありません。
さあ用意スタート。
考えましたか? 考えてませんね。あんまりふざけないでください。三十分ですよ、三十分。
一時間の半分の時間をかけて必死に脳みそをひねりにひねって答えを導き出すのです。
そうすればきっと何かが見えてくるはずです。見えてきます。見えてくるに違いありません。
見えるでしょう? 見えるはずがない。そんなことは当たり前のことなのです。
なぜそんなことがわからないのか不思議ですね。
ではここで問題です。
今目の前にあるこのお皿の上に載っている刺身の切り身は何のために存在しているでしょうか? はい、残念。時間切れです。
答えはありますがそんなものを簡単に教えてもらえるとは思ってはいけません。
わからないならわかるまで考えてください。三十分というのは適当な目安にすぎません。
こっちだってその程度の時間であなたが答えに行きつくなんて考えてません。
ただそのくらいで一旦区切った方が集中してやれると思っただけの話です。
どうでしょうか、それでも少しのほんの少しの解決の糸口の端っこのようなものぐらいは見つかったのではありませんか?
あいまいでも論理がぐちゃぐちゃでも構いませんからそれをあなたの言葉で説明してみてください。
それによって私はあなたの問題に対する理解度をはかることにいたしましょう。
あなたは何も言いませんね。まあいいでしょう。
正直なところたいしてあなたには期待していなかったしこれからも期待することはないでしょう。
通り一遍のうわべだけつらつら流されながらいい加減に生きていい加減に死ねばいい。それは私の知ったことではない。
答えだけちょこちょこっとメモっておいてください。簡単なことです。初めから答えは出ていたようなものです。
刺身は何も考えていません。
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