第4話 転生について1
いつもの夜更け、外では小雨がぱらついていた。そう言えば、予報では梅雨に入ったとか入ってないとか。もうそう言う時期なんだろうなと思いながら布団の上に寝転ぶ。今日はサワと何の話をしようか。
て言うか、俺は友達いないけど、彼女の方はきっと友達いるよな。話しかけてこない時はリアルが忙しいんだろうと勝手に思ってたけど、別の友達と話しているのかも知れない。
ま、その時はその時。しばらく反応がなかったのでスマホを置こうとした時、突然メッセージが入ってきた。
『転生ってどう思う?』
『それはリアル? フィクション?』
『どちでも』
『フィクションってもう何でもありやんな。無機物に転生とか意味分からん』
『ねー』
この話に食いついたと言う事はラノベを読んでいるか、ラノベアニメを見ているのだろう。て言うか、何故今回は転生の話? 相変わらず先が読めなくて、だから会話も楽しい。
俺はこの流れに乗って、創作の転生から話を膨らませる。
『転生が流行る前ってSFブームなんやっけ?』
『ラノベブームじゃない? 転生じゃない方の異世界ファンタジーブーム』
『スレイヤーズとか?』
『そうそう。その異世界ブームの前がSFって感じがするなあ』
サワさん、もう14歳設定を忘れてる。いや、小説の歴史関係に興味があればおかしくは……ないのか? まぁツッコミは止めておこう。今更だし。ただし、話の流れの修正はするかね。
『今は異世界と転生モノが混ざってる感じやね』
『そこは分けた方がいいのか、混ぜていいのか……』
『一応は分けた方がええんちゃう? 転生でチートじゃない話はまず見かけんし』
『リゼロくらい? 有名な転生モノで全ての能力がチートって言うんじゃない主人公って』
『他はグリムガル? あの地味さがええよな』
『まぁ転生じゃない異世界モノにもチートがない訳じゃないけどね』
『それの元祖はバスタード?』
『でもあの時代だから、そこまで主人公だけが強いって事もなかったよね』
バスタードネタであの時代とか言っちゃってる。ハッキリ自称14歳だ。実年齢は相当オバハン? いやオッサンかもな。まぁ構文使ってないから、そこは意識してるのか。
とは言え、世の中には若いのに古い話にやたら詳しいって人もいるから断言は出来んけど……。
ま、あまり年齢バレする話の流れもアレなので、こっそり流れを変えてみた。
『フィクションの場合、転生は都合よく利用されてきた感じがするわ』
『魔法とあんまり変わらん扱いだよね』
『まぁフィクションの転生って宗教用語を勝手にパクってる感じやからな』
『科学的に証明されていないからこそ、自由に設定出来るんだよね』
『そうそう、ファンタジーファンタジー』
『夢が広がるねえ』
どうやらこの流れで安定してきたようだ。ここから違う話題に飛んでも話のテンポが変わってくるので、一応確認してみた。
『じゃあ今日はずっと創作物の転生の話のターンと言う事で』
『て言うか、リアル輪廻転生はあると思う?』
『あるで』
『な、なるほど……』
即答したからか、しばらく返事が来なかった。もしかしたら違うリアクションが欲しかったのかも知れない。沈黙の時間に耐えられなくなった俺は、軽く探りを入れてみる。
『ちょ、引かんといて……』
『まぁでも輪廻転生はあるでしょ。仕組みは分からんけど』
『生まれる前の記憶ないもんなあ』
『記憶がないからこそ逆にね』
『魂は再現出来ないやん。AIが発達した今でも』
『意識が科学現象なら、そこも再現出来るはずだもんね。謎は深い……』
『いつか解き明かされる日が来るんかなあ?』
『でもロマンだから、ずっと謎でもいいよ』
『今の時代、ロマンが少ないもんな』
俺は彼女の言葉に共感した。科学で解き明かされていない事はロマン。どんどん色々な事が科学的に説明出来て行って、世の中は少しずつつまらなくなっていく。やっぱり今の時代であってもロマンは必要だろう。
そして、サワも俺と思いは同じようだった。
『そうそう、転生はロマンなのよ!』
『創作の転生は何書いてもいいからやりたい放題やけど』
『最近は書き尽くさたれから、変わり種と言うか変化球が多いよね』
『そもそも最初は異世界転生モノ自体が変わり種だったんやけどな~』
『時代は変わっていくね~』
そう、今は異世界転生モノは飽和状態だ。だからまだ手垢のついていない展開を求めて、どんどんニッチな物語になっていく傾向が強い。ある意味末期状態とも言える。
こう言う流れになったら、次に言う言葉が定番のアレになってしまうのは仕方のない事だろう。
『今後、転生モノはどうなっていくんやろ?』
『先の事は分からんね』
『までも、ブームが去って書く人が減っても、ゼロにはならんのやないかな。SFを書く人が今もおるみたいに』
『おいおい、SFは死んどらんよ。何度でも復活するさ』
『せ、せやね……』
話をSFに振ったためか、そこからは彼女のSF談義が続く。こっち系に疎かった俺はもう相槌を打つマシーンと化してしまい、彼女がネタを話し尽くした所で今日はお開きになったのだった。
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