地下4 始めての客

「クゥ〜ン」

「付いてくんな!」


 あ゛ぁ〜鬱陶うっとうしい!


 何でこの薬を使った奴は皆俺に付いてくるんだ!?


「ガオォォオ!」

「怖がらせようたって無駄だ。俺はそれ以上の恐怖に勝ってる」

「……キュ〜ン」

「それもダメに決まってんだろうが!」


 何なんだよこいつ……。


「いいか、俺の拠点兼店に来て良いのは客だけなんだよ!」

「クゥン?」

「あ゛ぁーお前にも説明しないとかよ」


 客についての説明や、売買の説明をする。


 正直言ってドラゴン相手にこんな事をなってる俺が馬鹿らしい。


 ……が、やっぱ客来て欲しいからなぁー。


 こういう宣伝みてぇなもんもしちまうんだよな。


「っつー感じだ。いいか? 金とか持ってこねぇと客じゃねぇの」

「ク、クゥン?」

「分かんねぇなら付いてくんな」

「ガオオオ!」

「あ? 突然叫びやがってどうした?」


 ドラゴンが何かを睨んでんな……敵っつー事だよな?


 俺も臨戦体制りんせんたいせいになる。


 ペタ、ペタと暗闇から音がする。


「来んならこいやぁ!」

「ゲコ!」


 ………あ?


「ゲコゲコ!」

「……おめぇかよ」


 ビビらせんなよったく。


「んで? 何だ? たまたま会ったのか会いに来たのかどっちだ?」

「ゲコゲコ、ゲーコ」

「金を持ってきただぁ? 嘘つくな。この階層に金なんざあるかよ」

「ゲコ!」


 ……ん? ゲコが舌で巻いてるのは……壁についてる水晶じゃねぇか。


「んなもん金になるかよ」

「ゲコゲコ!」

「ならねぇよ、そんなんそこら辺にいっぱいあっだろ、それが金になるんだったら俺の店の経済が回んなくなるだろ」

「ゲ……ゲコォ……?」

「クゥ〜ン……?」


 あー分かんねぇか。


「取り敢えず金が周りにポロポロあったら意味ねぇんだよ。価値が無ぇ」

「ゲ、ゲコォ……」


 あー見るからにしょげてぇらぁ。


「だーもう分かった分かった! それが金で良い!」

「ゲコ!?」


 どーせ買い物に来ても何買って良いか分かんねぇだろぉし、よーするにおままごとみてぇな事をすりゃあいい。


「ほら、さっさと店行くぞ」

「ゲコゲコー!」

「ガォン!」


 そうして店に戻った。



         ∞∞∞



「あー、マジかお前?」

「ゲコ!」


 コイツ水晶の色で値段が変わるってのと、価値の名前を提案してきやがった。


 ゲコはゲグルっつーのを価値の名前にしようと言って来た。


 ぶっちゃせ俺はどーでも良いからそれでOKとなった。


 んで色ごとの値段は緑だったら1ゲグル、青だったら10ゲグル、黄色なら100ゲグル、赤色なら1000ゲグル、ピンクなら5000ゲグル、紫なら10000ゲグルって感じになった。


 ……意外とイケるもんだなぁー。


「んで、価値は決まった訳だが……何が欲しいんだ?」

「ゲコゲコ!」

「あ?」


 ありゃあ……冒険者用の採掘道具じゃねぇか。


「あんなもん欲しいのか?」

「ゲコ」

「つーか使い方とか分かんのか?」

「ゲコ」

「分かった、580ゲグルだ」

「ゲッコ!」


 水晶がカウンターに置かれた。


 本気っぽいな……ま、客の注文はちゃんとしねぇとな。


「ほらよ」

「ゲコゲコ!」


 あー舌で採掘道具を取ったらどっか行っちまった。


「……で、お前はどうすんだ?」

「クゥ〜ン」

「……はぁ〜……わーったわーった、いても良いが、しっかり働いてくれよ?」

「ガオ!」


 ドラゴンは俺の店の用心棒になった。


 ったく、何でこんな事になったんだか……。

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