地上3 ダンジョン駅行き特急列車

 ボロアパートにて目が覚める。


『ローダーズ』で一番弱かった俺は、貰えるお金は殆ど無く、こんな所でしか暮らせない。


 さてと、今日は……どうしよう。


 きっとローダーズに行けば死んだ奴が帰ってきたとか何とかで面倒な事になるだろうから行きたくはない。


 ならばダンジョン……だが、ソロで行くのはいくら何でも危険だ。


 ダンジョンはチームで行くのが普通だ。


 何かミスしてもリカバリーできる事が多為である。


 ソロで行くのは本当の猛者もさだけだ。


 それこそ、探索者のランクが一番上の人とかがやる。


 この世界でも一応探索者ランクは存在している。


 死者を出来るだけ出さない為、ランクごとに行ける階層が決まっているのだ。


 ラノベとかと同じような感じで、『木』『銅』『銀』と続いて、最高のランクが『オリハルコン』である。


 最高ランクが架空の石なのは、架空の人物だと思わせるくらい強いかららしい。


 そしてそのランクに至った人物は今の所一人しかいない。


 その冒険者の名前は『凛王りんおう しょう


 凄い名前だ。


 そしてこの人物のみ全階層への行き来が許されている。


 彼の様な探索者になりたくて探索者を始める人も少なくは無い。


「取り敢えず二層に行くか」


 探索者は探索をしないと金は稼げない。


 やはりローダーズの皆に会わないように注意しつつ探索するしか無いだろう。


 剣をバックパックに取り付け、アパートから出てダンジョンへと向かう。


 電車で行くので駅のホームで電車を待っていたが、周りもやはりダンジョンに潜る探索者でいっぱいだ。


 この駅ではダンジョンの近くに新たに建設された『ダンジョン駅』に高速で行ける特急列車が出ている。


『まもなくー、一番線にー、特急ー、ダンジョン駅が行き参ります』


 おっ、そろそろだな。


 ダンジョンにて発見された素材などで、現代科学が飛躍的ひやくてきに上がった。


 今では普通の電車時速250kmで走れる上に、止まる時は全く揺れずにピタッと止まる事も出来る。


 今から乗るのは特急なので、速度が時速300kmだ。


川口かわぐちー、川口でございます』


 アナウンスがそう流れると同時にドアが開き、ゾロゾロと人が入っていく。


 空いていた席はすぐに座られ、他の人達はダンジョンで使う用の携帯椅子に座る。


 もちろん俺にはそんな品は無い。


 あまりお金が無いから買わないのだ。


 吊り革に掴まり、ダンジョン駅に着くのを待つ。


『まもなくー、東京ー、東京でございます』


 おっ、この次がダンジョン駅だ。


 やはり着くのが早いな。


 ドアが開いて、また探索者達が乗って来る。


 やっぱチームが多いらしく電車の中がガヤガヤしている。


 今の日本では、海外と同じように普通に電車内で喋っても良い感じになった。


 ダンジョン内での計画なんかを最後の最後までしっかり練らなければ、ダンジョンでは死ぬ。


 そしてなんと言っても、今の現代に使われている素材をダンジョンから採って来ているのは探索者達だ。


 周りもそれを分かって何も言わない。


『まもなくー、終点、ダンジョン駅、ダンジョン駅でございます』


 このアナウンスが流れた瞬間、探索者達は静かになる。


 今から行くダンジョンが自分の大成功の場となるのかもしれないという気持ちと、自分の死地になるのかもしれないという気持ちを落ち着かせる為だ。


 俺ももちろんこの時間に落ち着く。


 ドアが開き、決意を固めた人達が電車から降りる。


「……行くか」


 そう言って、ダンジョンへと向かった。

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