地上2 回復薬
「だ……第一層だ……」
あのあとも何度か戦ったがその度に何とか勝ち、剣を杖にしてようやくここまで辿り着いた。
ほんと奇跡としか言いようがないな。
俺がいたのは第五層なのだが、その層からはパーティーを組む事が推奨されている。
急激にモンスターが強くなっているからだ。
だが俺は生き残って第一層にいる。
……改めて考えるとやっぱ奇跡だな。
あっ、第一層に来たからって油断するなと思うかもしれないが、第一層目ではモンスターが出現しない。
なのでここは受付や土産屋などが沢山建っている。
つまりセーフティーゾーンだ。
受付に向かって歩く。
「はぁ……はぁ……」
「……あれ!? 直人さん!?」
そう言って駆け寄って来た女性は『
ダンジョンの受付嬢
ふくよかな体が特徴だが、元々はかなり高ランクの探索者だったらしい。
人は見た目によらないってこの事なんだな。
「直人さん!? 本当に直人さんですか!?」
俺の体を触って幽霊じゃない事を確かめている。
「大丈夫です、生きてますよ」
「でっ、でも貴方の仲間達から、モンスターに襲われた時に、荷物持ちである貴方は荷物を盗んで逃げようとしたところをモンスターに殺されたと……」
あいつらそんな事言ってたのか。
「違いますよ! 俺はそんな事やってないですしむしろあいつらの方が酷い事やってます!」
「そ、そうなんですか?」
耳打ちをして、ギルドメンバー達に見捨てられた事、ゴブリンを倒して
「どうりで
それとギルドメンバーの方々の件は……
『ダンジョン』が生成されてから日本の法律はガラッと変わった。
ダンジョン法というのが生まれ、ダンジョン内での罪は全てこれに当てはまる。
今回の件は『ダンジョン内殺人未遂』に該当するだろう。
ダンジョン外での殺人未遂と同じくらいの罪だ。
「そういうのはこっちでやっておきますから、直人君はしっかり病院に行って下さい」
「分かりました」
綾坂さんに【小回復】をしてもらって痛みと血が止まったので病院に向かった。
因みに外ではダンジョン内で取れた装備は、一部を除いて効果が無くなる。
物理ダメージ100%カットのマントがあったとしても外ではただの布と化するという事だ。
ダンジョン外でも効果があるのは国が責任を持って管理している。
テロリストなんかに渡ったら大変だからね。
「どうもぉー……」
「はい、一体どんなご用件でしょうか?」
「ダンジョン内で怪我をしまくったので一応見てもらおうかなと……」
「かしこまりました、番号札をお取りになってお待ち下さい」
ビーと音がして番号が書かれた紙が小型コピー機みたいな機械から出てくる。
それを持って待合室にて待つこと数分……
「89番の方ー、1番の部屋にどうぞー」
お、意外と早かったな。
1番の部屋に入るといつも俺を手当してくれる先生がいた。
「やあ飯島君、今回はどこを怪我したんだい?」
「えっと……ここと、ここと――」
そして一通り教え終わる。
「また随分と怪我したねぇ、『中回復薬』を
「ありがとうございます」
『中回復薬』というのを説明する前に、ダンジョンでの道具の効果の強さの説明をしておく。
強さには『小』『中』『大』『超』の四種類がある。
回復薬の場合は、小でかすり傷を、中で重症を、大で
今回の俺は所々重症だった為、『中回復薬』だった。
綾坂さんに【小回復】をしてもらわなければ道中ぶっ倒れてたかもしれない。
ありがたやありがたや。
「失礼しまーす」
と言って病室を出て薬をもらう。
「……うーん……」
飲みたくない。
いや、飲まなきゃいけないのは知ってる。
でもね、まっずいんですわこれが。
ゲームの勇者はこれを毎回飲んでいたんだとしたらもう尊敬の対象だ。
酸味、塩味、苦味、辛味、
これを全部混ぜた味だ。
意を決して飲む、もちろん鼻を摘んで。
「うぐぐぅ〜!」
体があまりに不味い液体を吐き出させようとするが我慢して流し込む。
するとみるみるうちに傷が治った。
「っはぁー、大変だったー」
……傷を治した俺は病院から出る。
はぁ……俺明日からどうしよう。
まあ第二層で少し戦ったりでもするか。
そう思いながら帰った。
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