第三章 始動
第11話 出発と終わり
リュミール王国 アンジェ迷宮伯領 トルム村―――
「ここが新しくダンジョンが見つかったって言う、トルム村かぁ!」
「すごーい!同じ村なのに私たちの村とは全然違う!」
「こんな沢山の人や建物、みたことないなぁ」
少年2人と少女1人が、復興が終わったトルム村の真新しい門をくぐって中に入る。
入ってすぐの大きな通りには、3人の言葉のとおり多くの人が行き交い、様々な店が広がっていた。
食料品などを売買している店もあるが、しかし特徴的なのは、何と言っても冒険者向けの店の存在だろう。
普通の開拓村には存在しない、武具を取り扱った店や魔法薬や道具の店が連なり、どの店も活気に包まれている。
少年の1人が、目見麗しい女性が手を振っている娼館の前で足を止め鼻を伸ばしているのを、少女が頬を引っ叩いて連れ戻した。
「よし、やるぞ!絶対にゴールドランクの冒険者になるんだ!」
「うん、僕たち“暁の剣”の第一歩だね」
「……やっぱり本当にそのチーム名にするの……?」
盛り上がる2人の少年を前に、やや引いた様子を見せる少女だったが、それでも期待に胸を膨らませた様子だった。
3人はワイワイと騒ぎながら、あるいは周囲を見渡しながらも……目的地である冒険者ギルドへと到着した。
リュミール王国 アンジェ迷宮伯領 トルム村 冒険者ギルド―――
「……はい。
では、オーンさん、エーウさん、アイさんの3人の登録が完了しました。
オーンさんとエーウさんの2人が戦士、アイさんが斥候ですね。
こちらが、冒険者としての仮免許になります。
何度か依頼を完遂することで、本免許になるブロンズランクになりますので、頑張ってくださいね。
依頼が無い場合でも、ダンジョンで得られる資材は貴重ですので、ギルドに持ち込んでいただければ査定して給金をお出しします。
もちろん直接商店に売っていただいてもいいですが、目利きが出来ないと買い叩かれることもあるので、慣れないうちはお勧めしません」
受付の女性は微笑みながら、鉄片で出来た
「依頼が無い場合でも、ダンジョンで得られる資材は貴重ですので、ギルドに持ち込んでいただければ査定して給金をお出しします。
もちろん直接商店に売っていただいてもいいですが、目利きが出来ないと買い叩かれることもあるので、慣れないうちはお勧めしません」
満面の笑顔を浮かべ頷く3人に、しかし受付の女性は少し表情に影を落とす。
口を開いては閉じ……周囲を見渡して、他に誰かの目がこちらに及んでいないことを確認すると3人に声を潜め話しかける。
「……その、気を付けてください。
あまり大きな声では言えませんが……美味しい話とかには、軽々しく手を出さないようにしてくださいね。
初心者冒険者さんは、特に……」
「ゴホン」
はっとした受付の女性の後ろには、いつのまにか冒険者ギルド長のイシュラの姿があった。
厳めしい顔つきに巌のような肉体の彼は、腕を組み、少し苦い顔をしている。
「君たちが新しい冒険者“暁の剣”だね。
我々冒険者ギルドは諸君らの門出を祝おう、君たちの冒険に苦難と、そして祝福があらんことを!
……何かトラブルがあったら、相談に来なさい。出来る限り力になろう」
「は、はい!ありがとうございます!」
急な大物の登場に背筋を伸ばしたオーンたち3人は、かくっと背を曲げ一礼すると、足早にギルドから出ていく。
さっそくダンジョンに潜ってみよう、そのまえに情報を集めないと……といった会話をしながら。
「……モモくん」
「すみません、ギルド長。でも……」
「……悪いな。気持ちは分かる。
俺も本当なら、警告してやるべきなんだろう。
だが、彼らに殊更に不安を煽ることも……商人ギルドの商売に過度に口を挟むことも禁じられているんだ。
すまない。わかってくれ」
「……はい……」
項垂れる受付の女性に頷き返しながらも、イシュラはため息をついた。
「……やるせないな」
3人の出て行ったギルドの出入り口のドアを、イシュラは見やる。
外は快晴であり、明るい光が室内に入り込んできていたが……しかし、イシュラには彼らが闇の中に進んでいくようにも思えた。
「この村は……マトモじゃない」
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