第10話 会議と蠢動
ダンジョンにて―――
「では、これより今後ダンジョン運営にあたり会議を始めよう。
今回の司会は、僕……ネイに任せられたよ」
4体の魔物が、迷宮の最奥である玉座の間……それよりもう一つ手前にある大広間。
そこにある円卓の席についていた。
『
『
『
『
いずれも、コアが最初に召喚した魔物である。
最初に召喚したということもあって、その実力はコアが後日召喚した魔物たちよりも一つ抜けた実力を持っている。
それ故、コアは彼らに名前を付け、以後は彼らを各部門のトップに据えてダンジョンの運営を行うことにしているのだ。
名をつけられた彼らは魔物という集団に属する存在ではなく、その名を持った個としての意志を持つ。
『
「今回の議題は、冒険者への対応について、だね。
先の会議で情報を共有したとおり、人間はこのダンジョンからほど近い場所に新トルム村を築いている。
妨害でそれなりに立ち上がりを遅らせることには成功したけれど、飽く迄も時間稼ぎ……村が完成すれば冒険者ギルドも本運営を開始し、このダンジョンを訪れる冒険者の数も増えるだろう。
その際万一にも守りを抜かれ、コア様を危険のないようにしなければならないが……しかし一方で、ほどよく『人間に負けてやる』ことも必要になってくるのだ。
それを踏まえ、まずは互いに現状改善すべき点を1つずつ挙げていこう。まずは……エスト、どうだね?」
ネイが『
エストはその逞しい腕を組み、目を閉じて考えていたが、やがて薄く目を開く。
「戦力の充実という点であれば、やはり武具の確保が急務だ。
先に入ってきた冒険者らの装備を剥ぎ取り、あるいは、ダンジョン外から材料を調達し、ある程度は自作しているが、限度がある」
エストの言葉に頷くネイだが、それに手を挙げるのは『
「武具を用意すると言っても、コア様の魔力に頼るのには反対だわ。
コア様が用意する武具は、飽く迄も冒険者への撒き餌のためだもの」
「俺たちが装備し、その武具の性能を見せつけてはどうだ?
こちらとしても軍備が整えられる」
「整えすぎてもだめよ。強くなりすぎて、
ソフィアとエストの会話に、ネイがポンと手を打つ。
「なるほど……いや、エストの案もいいかもしれませんね。
冒険者への撒き餌とする下位の魔物のうち、ごく少数に良質な武具を持たせましょう。
そうして、弱い魔物の持つ質の良い武具を狙う冒険者を増やすのです。
そうすれば、一部の精鋭が同じ武具を所持しても問題ないのではないかな?
良質な武器が欲しければ弱い魔物を倒す方が遥かに安全なら、皆そちらを選択するでしょう」
「意図的に絞るということか?」
「ええ。冒険者に提供してやる素材に、こちらで意図して
頷く面々。次にソフィアが意見を述べる。
「ダンジョンというよりは、今後のトルム村の件になるわ。
妨害で兵士の配備は遅らせていたけど、代わりに冒険者が警備についたわ。領主の権力を削ぎ落しすぎるのも得策じゃあないし、そろそろ潮時ね。
兵士が動き出すと……全員懐柔するには時間が必要だし、しばらくは偵察用の魔物も吟味していく必要があるわ」
「浸透させている魔物は、どれくらいかね?」
「『
『
「バレる前に撤退させるか?」
「いえ、バレていないならこのまま行ってはどうかな?
冒険者も……魔物が外からくればともかく、すでに内にいるものには対応が遅くなるのではないかね」
「ええ、ただ情報のやり取りは今後慎重に行う必要があるから……鮮度は落ちることは考慮しておいて」
「わかった」
「了解しました」
頷く魔物たち……と、これまで全く話をしていない『
彼はしっかりと3体の話を聞いていたようだが……ネイと、その伽藍の目が合うと、彼は頭を振る。サイエは声帯がないため通常の会話が出来ない……それ故に『
ただ、特段言いたいことはないようだ。ネイが頷く。
「では、今回の会議はここまでにするとしよう。
これからが本番です。
コア様のため、頑張りましょう」
ネイの言葉に他の魔物も頷く。
コアの願いを叶えるため、コアに尽くすために、魔物らは蠢動していく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます