7://邂逅
まず目につくのは身長より長い白銀の髪。
身体は一糸纏わぬ姿で、肌の色は灯里より数段白く、白人のような雰囲気だ。
身長はといえば、小柄な灯里よりさらに小さく、120cm程度だろうか。
「シロ……彼女、生きてる?」
『バイタルは、冬眠状態から覚醒状態へ移行中。脈拍は安定しています。総じて生きていると判断できるかと』
メカのOSらしい回りくどい言い方だが、要は彼女は生きていて、もうすぐ起きるということらしい。
そんな話をしていると、目の前の少女がゆっくりと瞼を開けた。
その瞳は、空のように青く透き通った綺麗な色をしていた。
「お……起きた?」
おそるおそる灯里が尋ねると、
「……ぬしは、何者じゃ」
幼女は、そう答えた。
「私は……灯里。え、えっと……この出会いは偶然っていうか……全然、敵じゃないと思うし……。そうだ、あなたの名前は?」
幼女の目に警戒心が宿っているのを見て、なにか誤解されているのではと焦る灯里。
「アカリ、か。……妙なヤツじゃな。わしの名は――アイオライト。なるほど、ぬしの間抜け面からして、奴らとは別口か」
言われて、ほうけた顔で彼女――アイオライトを見ていたことに気付き、顔を赤らめる灯里。
「えっと、その《奴ら》……って?」
「わしを攫い、ここに入れて冷凍した者どもじゃよ。まあ、わしにも正体はさっぱりわからぬがな」
その逸らした顔は、『これ以上は何も聞くな』と雄弁に語っている。
どうやら、かなり特殊な事件に巻き込まれているらしい。
「っとそうだ、このあたりは悪い人たちがいっぱいいるっぽくて、そろそろ出発したいんだけど……私を信用してくれるなら、一緒に来ない?」
灯里のバイザーには、シロからの『遠方より接近してくる複数の存在アリ』との警告を受け取っている。あまり時間はなさそうだ。
「……どうせ一人では何もできぬ。また氷漬けにされるのも勘弁だし……。うむ、わしを連れて行ってくれ、アカリよ。不思議と、ぬしからは悪党の匂いがせぬ」
「よし、決まり! シロ、パイロットスーツ一式、もう一セットこっちにちょうだい!」
『かしこまりました。――転送完了』
シロに頼むと、予備のスーツがすぐに送られてくる。
「アイオライト……そうだ、長いしアオって呼ぶね。アオ、歩けそう?」
「あ、アオ……? まあよい、肉体の衰えは感じるが……問題ない」
ゆっくりと装置から起き上がったアイオライトが、身体の感覚を確かめながら一歩を踏み出し、危なげなく装置の上から降りてきた。
「じゃあ、これを着て、メットも被ってね。サイズは可変だし、大丈夫なはず」
「うむ、こう……か。大丈夫そうじゃ」
「よし……じゃあ行こう、シロ、エアロック解除――!」
そうして二人はコンテナ船から脱出し、シロのコックピットへと入ったのであった。
「シロ、後部座席展開」
『複座モード起動します』
シロにはなぜか標準で複座用の設定が存在していた。後方のモニターが展開し後ろに空間ができ、瞬く間にこ後部座席が完成する。
「これが、ぬしの機体か。よい波長を感じるな」
「波長……? それより、腰のベルト繋いどいてね、すぐ戦闘になりそう!」
「うむ、問題ない。アカリの実力、見せてもらうとしようか」
なぜ上から目線なんだ、と灯里は後ろに座るアイオライトに苦笑しながらレーダーを確認する。
自分の感覚では、四方から6機ほどの敵機が来ているはず。それはどうやら間違いないようで、周辺に光点が6つ表示されている。
『ザッ……そこの白い機体、貴様は既に包囲されている。物資を全て渡すというなら、見逃してやろう』
近距離無差別通信特有のザラついた音声が鳴り響く。
この世界での戦闘にも自信のついた灯里は、漫画みたいなコテコテの悪党って存在するもんなんだなあ、と呆れていた。
なので、こう答えてやることにした。
「ヤなこった、バ――――カッ!!」
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