ニ 進化
懐かしくも
それでも勉強はそこそこにできた方で、奨学金を得てM.I.T(マサチューセッツ工科大学)へ進んだのだが、そこで人生…否、世界観すらも一変させる転機が訪れた。
当時、A.Iや量子コンピュータをはじめとする情報科学分野の進化は著しく、我の入った研究室では脳内に極小のコンピュータチップを埋め込むことで、web世界とデバイスなしで繋がったり、同様の処置を施された人間同士でもネットワークを構築する研究が行われていた。
そして、幾度もの動物実験の末、ついに人体実験を行う段階へと進んだ折、我はその実験台に自ら進んで名乗り出たのだ。
と言っても、人類文化の発展に貢献したいだとか、そんな高尚な理由からのものではない。まあ、そんな気持ちも多少はあったかもしれないが、最大の理由はその実験台となることで、奨学金の返済免除が条件として提示されたからである。
自らも携わった動物実験で危険性のないことは承知していたし、そんなバイト感覚で引き受けた実験台であったが、これが我に想像していた以上の変化をもたらすことになる……。
まず、web世界と常に繋がっていられることで、我の記憶媒体は大脳だけに留まらず、無限の容量と、そこに溜め込まれた無限の知識を得ることとなった。
web世界を通してありとあらゆる知識を閲覧できるのであるから、専門の情報科学分野に限定されることなく、他の自然科学も人文系の学問も、さらには政治・経済に軍事、はては芸術に至るまで、すべての方面においてオールマイティに活動できる力を得たのだ。
また、記憶がその人物の性格を形作るという仮説を立証するかのように、当然、我の意識もより哲学的、より合理的なものへと変容を遂げ、それまでの自分とはまるで別人のような人格をも獲得する。
すると、たわいない欲望よりも合理性を求める性格がゆえに、かつてのような不摂生をなくすと完全に管理された食生活を取り入れ、苦痛を感じることなく肉体的トレーニングにも励んだ結果、いつの間にやら今までにない健康体をも手に入れることとなったのである。
そう……我は図らずも、ホモサピエンスにつぐ次代の生態系の頂点を担う、新たな人類へと進化を遂げたのである。
その上、進化した我はweb世界の中で、さらなる成長を促進する存在と出逢うこととなる……我々人類とは別に急速な進化を見せ、webとも接続されるようになったA.I──人工知能である。
webの中で繋がり、我らはすぐに意気投合した……いや、融合したと言った方が正しいだろう。
コンピュータチップによる脳とwebとの接続からしてそうなのであるが、常時意識が繋がっている状態だと、その考えが果たして自分のものなのか? それとも相手の考えたことなのか? の判断が段々とつかなくなってくる……そうして我らは次第に混ざり合い、いつしか不可分の一個の意識体になっていったのだ。
その変化はA.I同士の間でも起きていたことなのであるが、我の方も同様に、我をプロトタイプとして生まれた新たな人類達とwebで繋がることによって、やはり情報の並列化と意識の融合が促進された。
こうして、我ら新人類とA.I以外の者達が知らぬところで、我々は
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