第4週 彼は「山の者」にはなれない
金がない。
一体いつ、誰が、どのような資料を見て言いふらしているのか知らないが、教会というものはいつも金がない。本当にない。あるのは金にならない「付き合い」だけである。
日本に「再上陸」する文化が出来ていたことは、世界中の
「ばえー! 松茸じゃ、松茸じゃ!
「…タケ子。俺は確かに日本のキノコには疎いが分かる。松の生えてない所に、松茸は生えない。」
「えー?
久しぶりに、五島列島に思い出巡りにやってきたローマンであるが、「さんたまりあ」を懐かしんでいる間に、島の娘と『妹』に見つかった。何ぞ、懐かしむ暇もなく、何故かこうして、秋の味覚をかき集めることになっている。人間の少女に山菜籠なぞ持たせる訳にもいかず、自分が2人分背負っているのだが、何せ「鰯の頭も信心から」とはよく言ったもので、
そして、申し訳ないが、キノコは全て、「毒がありそうなもの」行きだ。
「そりゃ、腹壊さなけりゃ、
「んじゃ問題なかね!」
「大アリだ! とにかく、キノコは全部こっちだからな。」
よいしょ、と、背中を傾けると、娘はポイと、その大きな、とりあえずなにがしかが食べるのであろう「野の草」を放り込んだ。
と、その時、ローマンは見たことのない「栗」が、娘の腰…と、いうより、尻についていることに気がついた。
「タケ子、ちょっと動くな。」
「お?」
「なんだこれ、随分と小さいが、栗―――ぐわぁぁぉぉ!!!」
娘の尻に着いてる「栗」を取ろうとした瞬間、その横顔に、回転する鎌が直撃した。そしてそのまま勢いを殺せず、どってんと右回転する。
「あっぱ〜!
「こん
「
これぞ山姥、とでも言わん形相で、一人の女が駆け下りてくる。だが、その外見は間違っても、『婆』と呼ばれるような歳ではない。
大丈夫だったか、と、娘を抱き寄せ、養豚場の豚を見るような眼で、彼女は血まみれの兄を見下ろした。
「
「五島に遺した
「だ、だって、タケ子が、栗を…。」
右の耳から鎌を引き抜き、耳の中に溜まった血を叩き出しながら弁明すると、ローマンの妹は、ん?と、娘の尻を覗き込んだ。
「栗ぃ? こんがかかえ?」
「あ、明らかに、みじゅくだから…野原にかえそうかと…。」
「…アッハッハッハッハッ!!!」
やっと、合点がいき、彼女は手を叩いて、ぷしぷしと血が出ている兄の頭を引っぱたいた。
「あーはいはい、
「わーい!
「…俺、ここでこんな奇跡の起こし方、したかなぁ…。」
それとも、そういう殉教のさせ方しかしなかったっけ、と、考えながら、塞がった傷の上から、血を掻き出す。一通り、すってんころりんとしたので、ローマンの服には、小さな「栗」が、全身にくっついていた。取るのは、とても痛かったし、しつこかった。
🍄
「…と、言うことがあってだな。お前の娘たちにはすまないが、俺はその「戦争」がどう転んでも「山の者」にはなれないんだ…!!!」
「自業自得ととばっちりの両方が100%同居って、有り得るんだね、兄さん…。」
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