賊、賊、ぞくぞく!
「クソッ!ウワサになってた奴らか!貨物なんて旅行者の荷物しかないのに!」
賊!?
暗殺者や白昼堂々の強盗がいるなら、賊が出るのもおかしくはないけど!
僕らのいるタイミングで来るなんて!
窓からそっと顔を覗かせると、普通の馬よりすこし小さいくらいのトカゲに乗った人影が。
素肌に革鎧、トゲ付きの肩パッドに
これほど説得力のある賊だとは思わなかった。
馬車に護衛は一応いるけれど、1人だけ。
賊は8、9人はいる。
馬車を囲んだ賊の1人が前に出て、メガホンのような道具で馬車に呼びかける。
「俺達の要求はふたぁつ!ひとつは貨物だ!全部貰っていく!もうひとつは乗客だ!」
乗客たちが騒ぎ出す。
「そんな!拘束されるのか!?」
「身代金目的!?」
「カンベンしてくれよ!」
「さすがに見過ごしておけないね」
「先生、やるんですか!?」
「人の命がかかってるかもしれないんだ、我々が体を張って守らないとね。目の前の人を救えずに世界を救うだなんて、とまでは言わないが」
「先生……!」
先生が武器として持ってきていた棒をグッと握ると、賊の声が続いた。
「乗客の中に『黒髪に白ヒゲのジジイ』と、『女みてぇな男』がいるなら出てこい!そいつらを引き渡せば他の乗客の命は助けてやる!」
みんなの目が一斉に僕らを向く。
「せ、先生、どうしましょう」
そう言って先生の方を振り向くと
亀甲縛りに
「すでに縛られてるーーーーーーー!!!!!!」
って、縛ってるのはマスターじゃないですか!
「なにしてるんですかマスター!」
「何って引き渡す準備だが」
「手際が早すぎる!じゃなくて、そんな簡単に賊に屈するんですか!?」
「さっき『我々が体を張って乗客を守る』って言っただろ」
「アレはそういう意味じゃないと思うんですけど!?」
「そもそもアタシはもうこんなハプニング続きはまっぴらなんだ!お前らを引き渡して平和に暮らす!」
「そ、そんな今更……!」
「いいから黙って縛られろ、アタシがやらなきゃ他の乗客がお前を殴り倒してでも捕まえることになるぞ」
「
「何言ってるかわからないんですけど!!」
そんなこんなで僕まで亀甲縛りで捕まってしまった。
ああ……よもやここまできてこんな目に会うとは。
心の片隅ではマスターは人を売るような奴じゃないと思っていたのに。
他人の心というものは本当に読めないものですね……。
縛られた僕らを馬車から降ろし、マスターが白旗を挙げて賊の頭目を呼ぶ。
「てっきり乗客共がもっとモメるかと思ってたんだがな、まあいい。捕まえたのは嬢ちゃんかい?へへ、上玉だな。とはいえ俺も約束は守る男だ、引き渡すなら手出しはしねぇよ。」
頭目が舌先をチロチロしながらゲスな笑みを浮かべる。
「ホントにこいつらで合ってるのか?顔をきちんと確認しなくていいのか?」
「黒髪に白ヒゲなんてトンチキな恰好はコイツだけだろうし、そもそも俺も顔の特徴は聞いてねえよ」
『聞いてない』?ってことはもしや、この賊どもも
逃げおおせてすぐに賊に依頼を送れるとかどういう行動力してるんだ。
と、マスターが突然に妙なことを言いだす。
「白ヒゲ?こいつはヒゲなんて生えてないが」
「「えっ!?」」
頭目と僕のセリフが被ってしまった。
先生の方を見る。
たしかにトレードマークの白ヒゲがない!
「バカな!さっきたしかに」
頭目が座っている先生のアゴをクイと掴んで持ち上げ、ヒゲを確認しようとする。
その瞬間!
先生を縛る縄がハラリと落ちて、懐に備えていたナイフが頭目の首元に突き立つ。
「う……!」
と、後ろにのけぞろうとする頭目。
しかし
「動くな」
マスターも頭目の
「て、てめえら……!!」
「もうちょっと人の事、疑った方がいいぞ」
「ちょっと油断しすぎじゃないかね?おかげで助かったけども」
ぽかんとしている僕。
え、全部演技だったのか。
「マジロ君も亀甲縛りを楽しんでないで早くほどきたまえ」
「いやマジロのには細工してないんだ。どうせ裏切られたと本気で思っただろうしな」
図星なので何も言えない。いや違う楽しんではないけっしてそういう趣味はない僕が図星と思ったのは裏切られたと思った事の方であって
とにかく!!!!!!!!
これで形勢逆転……なんだろうか。
緊迫した空気は未だに続いている。」
「
「つけヒゲだよ、言ってなかったっけ?」
「
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