第29話 悪役と切り札

 無詠唱、魔石無しの魔法展開。

 ありえないことだった。

 この世界に限って言えば、魔法と言うものは技術の一つだ。

 プログラミングだってソースコードがなければ動かない。

 ハードウェアが無ければ出力先が見当たらない。

 そもそも、電源がなければパソコンもスマートフォンも使えない。

 今シュナイダー卿がやったのは、元の世界で言えばそういう類の事だ。

 無から有を作り出すとはどんな世界でも不可能。

 だが現実は、俺の放った弾丸が魔法の盾に阻まれた。

 弾丸の衝撃によって盾こそ砕け散ったが、シュナイダー卿は無事だった。


「嘘だろ!?」

「ククク……この体実に

「取った!」


 ザッと踏み込んだのはヒルドだった。

 鋭い寄り身と共に剣を脇に寝かせている。

 レイピアの構え方じゃないが、すぐに手に持つそれが変化した。

 バオ! とレイピアが伸びて、またたくまに肉厚の大剣に変化。

 あの前哨基地で一瞬見せた一撃だ。ヒルドの切り札なのだろう。


「いけえええ!」


 ヒルドは脇に隠した刀剣をそのまま上段に構え空に伸び上がった魔法剣を思いっきり叩きつける。


 ギュワン!!


 聞いたことの無いような擦過音。

 光の残像を伴って、凄まじいスピードでシュナイダー卿に叩き込まれた。

 勢い余って地面を叩きつけたのか、砂埃も舞い上がる。

 ヒルドはすぐにバックステップでその場を去ると、左手の小さな魔法の剣だけを構えて残心を取っていた。

 ようやく着地した俺がヒルドに駆け寄って、再装填したショットガンを煙の方に向ける。


「ヒルド、どうだ!?」

「直撃したはず――」


 言い終わる前に、土埃が割れた。

 シュナイダー卿だ。

 拳を握り、一直線にヒルドに向かってきた。


「くそ!」


 ショットガンを打ち込むが、間に合わなかった。

 弾丸をかいくぐったシュナイダー卿が踏み込み、ヒルドの腹に強かに掌底を放つ。


「ああっ!」


 ヒルドが吹っ飛ばされた。

 俺は一気に頭に血が上って、ナイフを抜いて斬りかかる。

 が、首元に向かった刃がピタッと止まる。


「何だと」

「遅いなジェリーの息子」


 力を込めてもナイフの刃は進まない。

 推しても引いてもビクともしない。

 よく見ると、あろうことかシュナイダー卿はナイフを指でつかんで止めている。

 まずい、と思った時にはもう遅かった。

 シュナイダー卿の蹴りが飛んできた。

 それを脇腹にもろにうけて、一瞬意識が飛ぶ。

 気が付いたときにはヒルダの近くに背中から落ちていた。

 起き上がろうとするが、膝からカクンと力が抜ける。

 何とかして立ったが、息が詰まった。


「くそ。一撃で耐衝撃魔法ブレイク・ショックの魔石が壊れた」


 胸元のペンダントに仕込んだ、衝撃に対する備えが一発で壊れた。


「ゲホッ……わたくしのもです。弾除けの魔石も全て」


 ヒルドもせき込みながら立ち上がる。

 指を見ると、彼女のつけている指輪の魔石が何個か砕けていた。


「ありえない。何か隠してやがるな」

「隠すも何も。私の背中には子供たちの皮膚が移植されている。魔方陣の入れ墨を書いたものが何重にもな」

「……下種野郎が。体を魔石みたいに運用していやがるのか」


 とすると、あの異常な体術も納得。

 全部魔法による強化なのだろう。

 身体強化は第一種から第二種魔法にカテゴライズされる。

 効果を強く出したいなら、比例して魔石は大きくなり配合されている触媒も高価になる。

 アイツは子供達の素材を直接体に埋め込んで、自身を触媒と同化させているということか。


「いったい誰を素体にしてやがる。あんたのお気に入りの、尻の具合のいい小間使いか?」


 いとも簡単に伝えられる邪悪な行為。

 ついにヒルドが吐いてしまった。

 俺も吐きそうになった。

 子供たちの皮膚を加工して移植しただけでなく、素体に自分の孫を使うとは。

 

「同じ血が流れていると魂の同期も安定しているからな。魔術的なつながりでも、実の息子より孫の方が結びつきが強い事は錬金術で証明されている」

「お前……もう黙れよ」

「私としては貴様らの方が聞くに堪えない。殺意をまき散らすアサシン無勢が。貴様ら穢れた者たちは一人残らず魔石の素材にしてやる」

「なぜそこまで」


 ヒルドが口元を拭って再び剣を構える。

 精悍な顔つきだが、足が震えていた。

 奴の強さがどうこうではなく、おそらくはその悪意に震えている。


「なぜそこまで人を捨てられるのです!」

「こちらが聞きたい。何故そこまで人でいられる。おぞましき人に!」


 俺たちは無言でうなずくと、再びシュナイダー卿に飛び掛かった。

 だが、ダメだった。

 シュナイダー卿は本当に人を捨てていた。

 ヒルドと左右に分かれて攻め込もうとしたその瞬間。

 俺がショットガンを構えた時点でもう懐に入られていた。

 胸に衝撃。

 反射的に体をよじらなければ、心臓が止まるほどの衝撃。

 ボキボキボキ、と肋骨が折れる音が聞こえる。肺から空気が全て出て、悲鳴すら上げられなかった。

 気づいたときは宙を舞い、大きく吹っ飛ばされていた。


「ラムダ!」

「ヒルド逃げ……」


 体を起こした時には、もうヒルドがこちらに飛んできていた。

 何とかして受け止めたが、胸に痛みが走って気絶しそうになった。


「がっ」

「ラム……ダ」

「ヒルド……大丈夫か……」

「腕が。掴まれて、お、折られてしまった」


 ヒルドを抱きかかえると、血の気が引いた。

 ヒルドの左の手首から先が変に曲がっている。

 多分、短い魔法の剣で突いた時に手首を取られて、そのまま乱暴に放り投げられたんだ。

 ヒルドを抱きかかえてショットガンを構えると、シュナイダー卿は手を広げて「撃ってみろ」と笑っていた。


「くた、ばれ」


 引き金を引く。

 散弾が飛ぶ。

 だがシュナイダー卿は片手で魔法の盾を作り防ぐ。

 魔法の盾はバリバリと崩れ、使い捨てにされた。

 瞬間、シュナイダー卿の背中に光が見えた。

 多分、移植された子供の皮膚が耐えきれなくて魔力を放出したのだろう。

 あの一発一発が子供の悲鳴だと思うと吐き気が込み上げてくる。

 構わずもう一発。

 今度はナイトシリーズが寄ってきて、弾丸を盾で弾いた。

 最後の一発。

 もう一体のナイトシリーズが寄ってきて、同じく弾丸を盾で弾いた。

 見せつけるように。

 絶望を植え付けるように。

 死んだ時に憎悪を掻き立てるように。

 あのジジイはわざとそうして、俺たちの手が届かない所にいると見せつける。

 そうするんだろう。

 あいつは人を恨んでいる。

 人に対して絶望している。

 だから見せつけるような事をする。


「ラムダ……」


 ヒルドがカチカチと歯を鳴らして怯えていた。

 シュナイダー卿の強さもそうだが、そのおぞましさに今になって恐怖を感じているようだ。


「そんな顔をするな」

「でも、もう手がありません。もう雷の大剣は使えない。左手は折られて、守護する魔石も全て壊れてしまった」

「聖女ヒルド!」


 ナイトシリーズがシュナイダー卿の元に戻ったからか、司令官の爺さんたちがこっちにやってきた。

 大分善戦をしたのか欠けてる人数は少ないが、皆怪我をしている。

 魔法防御が効かないくらい苛烈な攻撃を受けたということなのだろう。


「おやおや惨めなものだ。アサシンが護られているとはな」

「ヒルド。爺さん。悪い。俺だけじゃ勝てないみたいだ」

「弱音を吐くなアサシン。最後まで諦めるな」

「し、しかし。どうすれば……」


 流石にここまでされたらもう、認めるしかない。

 俺だけじゃ勝てない。

 ヒルドと一緒でも勝てない。

 あんな切り札を出されたんじゃ、普通じゃ無理だ。

 人間の皮膚や臓器を触媒にして体に埋め込んで、孫を素体に使うような邪悪に歯が立たない。

 アイツがそう言うならそう言うことを本気でするのだろう。

 やがて全部の人間を鉄仮面にして、自分の意思だけで統一する世界にするつもりだ。

 それは御伽話や、俺の世界のゲームで言う魔王と何が違うのか。

 あれは人間の敵。

 殺さなければならない。

 けれど、俺だけじゃ無理だ。


 ――


 アイツは勝ち誇っているみたいだし、ヒルドも解放戦線の面々も絶望に塗れている。

 だから勘違いしそうなものだけど。


 違う。

 違うんだなぁ。


 何故かといえば。

 俺はまだ切り札を切っていない。

 無詠唱で魔法を使われた時に、もうそれを使う事は決めていた。

 これは位置が重要だ。

 あれだけ動く奴が固まるのは勝利を確信した時しかない。

 そして、うまくいった。


 

「くっ……ククク」



 思わず笑ってしまった。

 

「ラムダ!?」

「ほう。腹をくくったかジェリーの息子。その笑み、あいつとそっくりだ。窮地に立っても尚も笑うその不快な顔。三十年前を思い出す。忌々しい限りだ」

「そうか。それももう見れなくなるかもな」

「減らず口を。貴様の顔をはぎ取ってジェリーの前に出してやろうか」

「あー、そりゃ無理だな。アンタもうおしまいだよ」

「!!」

「何を――」

「ぶっちゃけやりたくなかったんだよ。俺だけの力でやりたかった。でも無理だってわかったから、自然とそうしちゃったんだよな。アンタがそうやって見せつけるように兵隊を揃えるのは


 あははと笑う俺に、皆は困惑していた。

 シュナイダー卿もまた困惑していた。

 絶対的優位にあるはずなのに、いきなりアサシンが笑うその不気味さに顔をしかめていた。

 そうだろうな。

 店長の知り合いというのならそうだろう。

 こいつはアサシンの恐ろしさを理解している。

 だからこういう状況を、はったりなのか本当なのか判断しかねている。

 それを知らずにナイトシリーズをけしかけられたら、最悪相打ちだったかもしれない。

 でもこれで十分だ。

 俺が一人でできないと言った瞬間、もう彼女は迫ってきている。


「何だ。何を言っている」

「いい事を教えてやろうか。俺、まだ切り札を切ってないんだよ」

「!?」



『まったくもう。もう少し早く呼びなさいな』



 俺のポシェットから聞こえてきたのは、ため息交じりの声。

 幼女の声だ。

 この戦場に場違いな、可愛らしい声。

 そして目の前に振ってきた影。

 そのシルエットは一瞬、小さな天使にも見える。

 だが砂埃から鎌首をもたげるようにして起き上がるのは翼ではなく、二つの巨大な鉄塊。

 それは腕だった。

 彼女の背中から生えるそれは、腕と呼ぶにはあまりにも太い。

 握っているのはガトリング砲。

 鉄仮面が持っていたそれよりも倍の口径はある破壊兵器。

 ガシャン、と天に掲げたガトリング砲が降りてくる。

 地面にアンカーを深々と突き刺して固定。

 シュナイダー卿が状況を理解するその前に、ニトは発射体勢になっていた。


「お、お前は! 『鉄腕のニト』!」

「ごきげんようシュナイダー卿。そしてさようなら」


 すぐに砲撃が始まった。

 鉄腕が音を立てて、勢いよくクランクを回し始めたのだ。


 ドガガガガガガガガガ!


 ヒルドの顔を抱きかかえて、その暴風のような力を眺める。

 彼女の力は強大。

 アサシンとしては過ぎる力を持っている。

 あんな武器を振り回すものだから仕事は対多人数が多い。

 ついでにいうと姿が姿なので、VIPの子供も護衛していたりする。



「あっはっはっはっはっはっは!」



 ニトの笑い声が響き、耳をつんざくような銃撃が続く。

 見るとシュナイダー卿は魔法防御シールドで何とか耐えようとしていた。

 避けるに避けられないのだろう。

 なまじ兵器というものを知っているからこそだ。

 この連射力、この威力。

 魔法防御を一瞬でも解いたなら体の一部が引きちぎられて、あとはボロ雑巾のようになるだろうから。

 シュナイダー卿の背中が魔力の光を放出する。

 犠牲になった子供たちの皮膚がドンドンと燃えていく。

 やがてニトの弾丸が魔法防御シールドを突き抜け始める。

 そして先に倒れたのは鉄仮面だった。

 とめどなく放たれる暴力はやがてナイトシリーズの盾を破壊して、肉を穿ち、挽肉になった。

 二体がぐずぐずに崩れ、腐った血の匂いが充満する段でカラカラと打ち止めの音がする。

 もうもうと立ち上がる血煙から現れたのは、足を吹っ飛ばされ大量出血しながらも、まだ生きているシュナイダー卿だった。


「あらやだ。仕留めたと思ったのに。サリーちゃんにもう一ケース貰っておけば良かった」


 ニトはガトリング砲を放ると、あっけに取られていたヒルドや解放戦線の面々に振り向き、スカートの裾を掴んで淑女の礼をする。


「こんばんは皆さま。私はニト。ニト・ワンドリッチ。ラムダの姉。この右腕が『ブレイズ』。左腕が『ギガント』」


 ニトの背中から生える、大人の胴ほどの太さがある腕がグッとサムズアップした。

 彼女の背中に接続されているのは彼女の一部。

 彼女の中の魔力炉を糧に自由自在に動く眷属のようなものだ。

 普段は折り畳まれてニトの部屋の棺桶のようなものに収まっている。

 腕だけでもある程度自立して動くので、家に帰るなりニトから外れて外壁をよじ登り、ニトの部屋の窓から自分で帰っていく姿はかなり不気味だ。

 ホムンクルスが禁止されているのは、彼女のように自らの意思を持った上で兵器転用を可能とすることにある。

 仮に彼女たちが人間たちに決起したならば一大事ということは、これでよくわかるだろう。

 故にホムンクルス製造周りの法律はガチガチになっていて、製造の気配をしただけで死刑になる。

 だからこそだろう、シュナイダー卿はホムンクルスに迫る兵力を作り上げたわけだ。


「あ、貴方がラムダの……姉?」

「そうよ――まあ。聖女がこんなに顔を汚して。怪我もしているじゃない! ラムダ、ダメじゃないの。しっかりと淑女を守らないと」


 めっと叱られた。

 皆がいる前でやられると恥ずかしい。


「兵器転用のホムンクルス。最後に密造されたのは何年も前と聞く。貴方はもしや」

「ええ。製造元はお父様がみんな斬り殺してしまったから、私が最終型。つまり、私が現時点で最強のホムンクルス」


 うふふと微笑むニト。

 最新で最強というのは、彼女の誇りだ。

 

「おの……れ。人類の恥め」


 何とか起きあがろうとするも、グシャ、とその場に倒れ込むシュナイダー卿。

 見ると足が治癒を始めているが、さっきの攻撃で背中の皮膚がほとんど焼けてしまったのか、その回復は遅いようだ。


「き、貴様らホムンクルスはいてはいけない存在。こ、コストもかかる上に残虐極まりない。平和の使徒は、ひ、人から作られるべきだ」

「あらあらあらあら〜? 子供を切り刻んだお方がどの口で言うのかしら。そんな事言われると、『ギガント』と『ブレイズ』が怒っちゃう」


 ガンガンガン、とニトの鉄腕が拳を打ちつける。

 彼女の怒りを代弁しているかのようだった。


「ニト、ここからは俺がやる」


 胸の痛みを何とか抑えて立ち上がる。

 ヒルドもまた一緒に寄り添うように立ってくれた。


「可愛い弟。貴方はもうボロボロなのよ?」

「切り札はもう一つ残ってるんだ」

「へえ、家訓をしっかり守っているのね」

「今回ばかりはたまたまだけどね」

「あらまあ。でもそういうのも可愛いわよ」

「だからさ、俺はここから彼女とやる」

「ならば止めないわ。お姉ちゃんがちゃんと見ていてあげるから。しっかりと決めてきなさい」


 ヒルドと共に、這いつくばるシュナイダー卿の前に立つ。

 シュナイダー卿は必死に逃げようとしているが、その動きはもうナメクジのように緩慢だった。


「ヒルド、片腕使える?」

「ええ。ラムダ、それは?」


 腰から取り出したのは小さな単発銃。カリブの海賊が以っていそうな、彫金装飾の美しい逸品。

 ヒルドと一緒にそれを握り、なおもズルズル、ズルズルと這って逃げようとするシュナイダー卿。

 なんという引き際の悪さだろうか。

 この力が、これだけの地獄を生み出したのか。

 ここで止めなければならない。

 単発銃を向けて、二人で撃つ。

 その衝撃が胸に響いて痛かったが、ちゃんとシュナイダー卿の背中に着弾した。

 シュナイダー卿はくぐもった声をあげたが、振り返りキッとこちらを睨んできた。


「終わりだよ、アンタ」

「くそ。く、来るな!」

「アサシンを舐めすぎだ。俺は一人じゃない。ワンドリッチ一家なんだ。店長だって今頃、アンタの息がかかったアサシン商会の重鎮を殺してるだろうさ」

「ジェリーが……」

「それにアンタは武器の事はよく知ってるけど、戦いの駆け引きの事はあんまり得意じゃないみたいだな」

「何」

「ウチの家訓には『切り札は二枚』って言葉がある。相手も切り札を用意してるから、それを超えるものをもう一枚ってな――ほら、聞こえてきただろう?」


 ヒュルルル、と何かが飛来する音。

 それは次第に勢いを増して、確実にこちらに向かっている。


「打ち上げハープーン。サリー・メイガスお手製の設置型兵器。アンタに打ち込んだのは信号弾さ。遅れて来るのは、飛龍すら撃ち落とす大型の銛だ」


 ハッとしてシュナイダー卿が空を見る。

 月夜に照らされてキラリと輝き、ダメおしに魔石による推進力増強が働いたのか、箒星のようになってこちらに向かってくるものがある。


「バカな!」

「アンタはヒルドを泣かせた。これが俺の殺意の理由だよ。憎悪も感じる間もなく、バラバラになりやがれ!」

「うおああああ!!!」


 シュナイダー卿が最後の力を振り絞り、空に何重もの魔法の盾を作り出す。体そのものを触媒にグズグズと崩れながらだ。最早何を守るのかを忘れて手段だけを取る。ここまでさせる執着とは恐ろしいものだ。

 しかし、だからどうしたとばかりに飛来した銛はそれを突き抜け、勢いを落とさず――着弾。

 その威力は凄まじいものだった。

 風圧で飛ばされそうになったが、それを防いでくれたのはニトの鉄腕だった。

 やがて土煙が止み、ビチャビチャと嫌な音が周囲に響く。

 シュナイダー卿は跡形もなくなっていた。

 そこには血塗られた銛が墓標のようにして、地面に深々と突き刺さっていた。

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