第37話 1日目 -夜営-

母さんがテントで料理をしていた。


母さん自身が昔から持っていたアイテムポーチの中に調理器具と食材が入っていたようだ。


アイテムポーチ。


大きさによっては、金貨数枚から大金貨数万枚にもなる価値がある。


旅立つときにボクも一つ貰った。


とても小さな物だけど。


武器と小物が入るだけの物。


旅には必要だろうと渡された。


母さんのアイテムポーチは討伐隊時代の支給品だったらしい。


「お、旨そうだな」


「ふふ、美味しいわよ。

はい、どうぞ」


母さんは、そう言って父さんにお椀を渡した。


野菜スープに押し麦の入った雑炊のような物だ。


母さんの調合したダシで味付けをしている。


秘伝のダシと言えるだろう。


幾つかのスパイスや乾燥した魚を砕いて粉末状にした物である。


「この味、懐かしいな。

リリアスの料理って感じだ」


「なによ、それ・・・ありがとう」


母さんは、照れながら父さんと会話をしていた。


自身の母親ながら可愛い一面があるのだと気付かされた。


「さて、ハルマン。

飯を食ったらまずは寝ろ。

前半は俺が見張りをする。

夜の後半はお前の番だ」


「はい、じゃあ食べたら休ませてもらいます」


ボクは、母さんのご飯を食べるとすぐに眠りに就くのだった。



ボクの身体が大きく揺すられる。


「・・・マン・・・ハル・・・ハルマン」


父さんの声が聞こえた。


あ、時間なのか。


「父さん・・・ごめん、寝すぎた?」


「いや、そうでもないさ。

じゃあ、あとは頼むな」


そう言って、テントの場所を入れ替えボクはテントから出た。


そして、テントの前に焚かれた焚火の前で腰を下ろす。


パチパチと音を立てながら火が揺らめいている。


ボクは焚火を眺めながら夜を過ごすのだった。

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