第37話 1日目 -夜営-
母さんがテントで料理をしていた。
母さん自身が昔から持っていたアイテムポーチの中に調理器具と食材が入っていたようだ。
アイテムポーチ。
大きさによっては、金貨数枚から大金貨数万枚にもなる価値がある。
旅立つときにボクも一つ貰った。
とても小さな物だけど。
武器と小物が入るだけの物。
旅には必要だろうと渡された。
母さんのアイテムポーチは討伐隊時代の支給品だったらしい。
「お、旨そうだな」
「ふふ、美味しいわよ。
はい、どうぞ」
母さんは、そう言って父さんにお椀を渡した。
野菜スープに押し麦の入った雑炊のような物だ。
母さんの調合したダシで味付けをしている。
秘伝のダシと言えるだろう。
幾つかのスパイスや乾燥した魚を砕いて粉末状にした物である。
「この味、懐かしいな。
リリアスの料理って感じだ」
「なによ、それ・・・ありがとう」
母さんは、照れながら父さんと会話をしていた。
自身の母親ながら可愛い一面があるのだと気付かされた。
「さて、ハルマン。
飯を食ったらまずは寝ろ。
前半は俺が見張りをする。
夜の後半はお前の番だ」
「はい、じゃあ食べたら休ませてもらいます」
ボクは、母さんのご飯を食べるとすぐに眠りに就くのだった。
◇
ボクの身体が大きく揺すられる。
「・・・マン・・・ハル・・・ハルマン」
父さんの声が聞こえた。
あ、時間なのか。
「父さん・・・ごめん、寝すぎた?」
「いや、そうでもないさ。
じゃあ、あとは頼むな」
そう言って、テントの場所を入れ替えボクはテントから出た。
そして、テントの前に焚かれた焚火の前で腰を下ろす。
パチパチと音を立てながら火が揺らめいている。
ボクは焚火を眺めながら夜を過ごすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます