第2章 シアンと共に歩むために
第35話 1日目 -旅程-
グランディッシュへの旅が始まった。
この日は、ツァエリとグランディッシュの領境で野営をすることになった。
距離としては然程進んではいない。
「旅程は最短で3日だが、一週間かかっても文句はないだろう」
「でも、父さんの領地の人が困らない?」
「ああ、それは大丈夫だ。
優秀な副官がいるからな」
優秀な副官?
なんか、その人は苦労してそうだな。
父さんは、どちらかと言えば考えて動くってタイプではない気がする。
なんだか、直感タイプな人のイメージがあるから。
「そんなことよりも、ハルマン。
お前の剣の修行にこの1週間を費やそうと思ってな」
「修行!」
その単語に、心が躍った。
父さんの剣を学べる。
「リリアス。少し野営の準備をしてもらえるか?」
「うふふ、いいわよ。
貴方も戦ってみたいんでしょ。息子と」
「ああ、洗礼を受けたばかりで案山子を破壊する剣戟楽しみだ」
僕と父さんは、母さんから距離を取る。
そして、お互いに剣を握り構える。
「よし、ハルマン。
遠慮せず掛かってこい」
「はい!」
僕は、父さんに目掛けて袈裟斬りをする。
だが、その一撃は防がれた。
「く、重たいな。
確かに、ウェインという騎士がいうほどはあるな」
父さんにそう言われて嬉しかった。
ワクワクする。
父さんは、どんな剣を教えてくれるんだろう。
「威力は充分、ならスキルを使いこなせるように身体の動かし方を覚えていこうか」
「身体の動かし方?」
「ああ、スキルには大きく分けると横薙ぎと突き、袈裟斬りの動作がある」
「うん、袈裟斬りと横薙ぎは案山子にもしてたよ」
「突きはどうだ?」
「してないかも」
案山子相手に突きなどしない。
それに、間合いは一定だし動きも単調だった。
「理解したみたいだな、単調だった動きを変動に柔軟にしていくんだ。
ここから、1週間俺と打ち合いをしてものにするんだ」
そういって、父さんは僕と剣を交えていく。
ただし、真剣ではなく木剣で。
父さんの剣戟に僕の剣戟を重ねる。
当て続けるのだ。
でも、それだけのことなのに何かを掴めそうな気がした。
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