第31話 リリアスとハルクト

「ハルクトよりも特異なのは確かね。

剣聖の称号が保留で授けられているのも頷けるわ」


「(剣聖)は保留なのですね。

称号とはそんなに早く手に入る物なのですか?」


そう訊ねたシアンだったが、自分で言ってありえないことを理解したようだった。


それは、ボクにもわかる。


訓練の時のボクが異常だったことを考えると称号の発生もおかしな気がする。


「シアンちゃん、気づいた通りよ。

洗礼式以外で称号を授かるのは、何年も何十年も掛かるのよ」


「そういえば、リリアスさまはハルクトさまとはいつ頃出会ったのですか?」


「それは・・・実は同じ村の出身だったのよ。

だから、幼馴染みなんですよ」


「リリアスお母様とハルクトお父様は幼い頃から愛を育んでいたのですね」


そうシアンに言われ少し苦い顔をしていた。


そして、溜息を少し吐く。


「ハルクトは、鈍感だから想いを告げたのも私からなの。

それが、討伐隊に参加する前日で遠征中にハルマンが生まれたの。

それから、12年離れ離れで・・・」


「リリアスお母様可哀そうです」


「うふふ、ありがとう。シアンちゃん。

でも、だからこそ二人にはしっかりね」


「はい、リリアスお母様」


すっかり、シアンと母さんが仲良しになっていた。


ボクらの問題か。


グランディッシュ家は侯爵だから、ツァエリ家と同格。


爵位としては、何の問題もないのか。


だから、父さんたちは話し合いをしている。


そう考えていると、シアンがボクの肩に頭を乗せてきた。


彼女の温もりを強く感じた。


「ワタクシは、ハルマンの事が大好きなのでこれからもアタックしつづけます」


「そんなにアタックしなくても、ボクはもうシアンの事大好きですよ」


「えへへ、ハルマン」


シアンは、ボクに甘えてくる。


その甘え方が、猫のような感じだけど。


ボクの肩に頭を乗せて擦り寄って来るのだ。


ちょっとくすぐったい。


でも、嫌じゃない。


ボクは、シアンの頭を撫でる。


彼女の目がとろーんと細目になっていく。


「可愛い」


「ふえぇ」


ボクが呟くとシアンの口から変な声が出た。


本当に可愛いと思えてしまう。


どんどん彼女に惹かれていく。

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