第27話 シアンとお呼びください

「ハルクト様、少し詰めていきましょう」


「マルクス様、そうですね・・・実は、リリアスを正妻にするからハルマンは長子になると」


「なるほど、シアンには兄もいるので特に継承権は低いため」


「じゃあ、シアンちゃんは私の娘に」


話が明後日の方向に向かっている気がする。


ボクが目を白黒してると抱き着いたままのお嬢さまが僕の胸で顔をグリグリとしてくる。


「あの・・・お嬢様・・・」


「ハルマン、もう貴方は同格の貴族令息なのですから。

ワタクシはもうお嬢様ではないですよ。

シアンとお呼びくださいませ」


そうだった。


ボクは、もうお嬢様とは呼んではいけないのか。


シアン・・・シアン・・・シアン。


「し、シアン・・・」


「はい、ハルマン♡」


お嬢・・・シアンは、とても嬉しそうだった。


声色は、とても甘い。


ボクの心も溶かされそうなほどに。


「うふふ、シアンちゃん可愛い」


「ふふふ、リリアスさま。

ここは、当主同士で話し合ってもらって私たちはティータイムにしませんか?」


「アクアさま、それはいいですね。行きましょう。

シアンちゃん、ハルマンもいきましょう」


そういって、ボクらは母さんとアクアさんに連れられ応接室を出た。


シアンは、ボクの腕に抱き着いていた。


結局、今朝の彼女の願いが叶ってしまっただけのことだ。


そう思えてしまう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る