第26話 両親と求婚
ボクは、疲弊しながらお嬢様とお屋敷に戻ってきた。
そう言えば、街中が賑わっていた気がする。
屋敷に着くと見慣れたメイドさんが駆けてきた。
「お嬢様、ハルマン様」
「あら、ミナが慌てるなんて珍しいわね」
「た、大変です。
お二人共急いで応接室へ」
「応接室ね、行きましょう。ハルマン」
「あ、はい」
ボクは、お嬢様と応接室に向かった。
でも、屋敷中がなにかソワソワしている気がする。
なにがあったんだろう?
やがて、応接室の大きなドアの前に来た。
コンコンコンコンとドアをノックするお嬢様。
「シアンです」
「入りなさい」
お嬢様は、ドアを開ける。
ボクもそれに続く。
応接室には、マルクスさん、アクアさん、それに母さんと男性が座っていた。
「母さん!」
「あら、ハルマン。数日会わない間に立派な体つきになったわね」
「そうか、お前がハルマンか。
たしかに赤ん坊のころの面影もあるな」
そう言ったのは、見知らぬ男性だった。
それに、母さんの恰好は白を基調としたローブで所々に金糸をあしらった如何にもお高い服だった。
生地もとても上品で滑らかな質感がありそうなほどに輝いている。
「シアン、この方たちが勇者ハルクトさまと聖女リリアスさまだ」
「はじめまして、シアン・ディ・ツァエリです。
お二人ともよろしくお願いします」
「ええ、シアンさん。よろしくお願いします」
そう母さんは、お嬢様に答えていた。
あれ?「さん」?
「では、私も自己紹介をハルマンの母で元聖女のリリアス・ディ・グランディッシュです」
あれ?母さんが貴族になってる?
どういうこと?
それに聖女って。
「じゃあ、俺もだな。
分け合ってずっと会えていなかったがハルマンの父で不本意ながら勇者と名乗らせてもらっているハルクト・ディ・グランディッシュだ」
この人が、俺の父さん?
ボクの頭が追い付かなくなってきた。
そんなボクの手を握るお嬢様。
「あらら、仲良しなのね。シアンさん」
「はい、ワタクシ。ハルマンの事が大好きなのです。
ですので、ハルマンをワタクシにいただけませんか?」
「お、それは願ったり叶ったりだ。
これで王国の鼻っ柱をへし折ってやれる」
あ、だめだ。
もっと頭が追い付かなくなってきた。
なんで、お嬢様はボクにとどめを差してくるの?
「待って、貴方。ハルマンの気持ちも大事だから」
「ん?ああ、それもそうだな。ハルマン、どうだ?」
どうと言われても。
でも、でも。
「好きです。お嬢様のことが」
「まあ!ハルマンからそう言ってくれるなんてワタクシ感激ですわ」
そう言って、お嬢様はボクに抱き着いてきたのだった。
それを見て、大人4人はうんうんと頷いていた。
もうなんなんだよ。
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