第22話 1日の終わりに
空はすでに黄昏色に染まっていた。
目の前の案山子は、一撃ごとに壊れていく。
そして、すぐに再生される。
「ハルマンくん、もう日が暮れます。
ここまでにしましょう」
「あ、はい。ありがとうございました」
ボクは、案山子に背を向け、木剣を近づいてきたウェインに返す。
木剣は、もうボロボロになってしまっていた。
「ハルマンくんには、もう打ち込みは必要ないかもしれません」
「ウェイン、ハルマンがこれ以上強くなるにはどうしたらいいですか?」
「そうですね、剣の師匠がいればいいのですが」
師匠。
確かに、ボクにはそう呼べる人はいない。
狩りは、村の人たちに教わって来たけど。
「少しお父様に聞いてみますね」
「お嬢様、よろしくお願いします」
「ハルマンくん、基礎練習は自由にしに来てくれていいですからね」
ボクの仮入団はこうして終わってしまった。
◇
ワタクシはずっと見ていました。
ハルマンが、壊した案山子は1万を超えていました。
最初の一時間では一体の案山子を倒すのがやっとだった。
それから、1時間1時間と時間が経過するにつれて彼の剣撃は熟達していき3時間が経過する頃には一撃で破壊するほどになっていました。
お昼の事でした。
本来ならありえない光景です。
一撃一撃で案山子が壊れ、再生する。
案山子は、自己再生の効果が付与された魔道具です。
本来は、こんな一撃を放てる剣士は早々いません。
「ウェイン、貴方の予想のどれほど先に行きましたか?」
「基礎練習だけで、領軍騎士団長クラスの実力に。
これに技術が加わると彼の勇者様に匹敵すると思われます」
「流石、ハルマンですね。才能の塊です」
勇者の子供だけのことはありますね。
ワタクシは、いい出会いに恵まれたと思います。
それにしても、師匠ですか。
でも、そうすると離れ離れになってしまいそうで嫌ですね。
どうしましょう。
お父様に相談してみましょう。そうしましょう。
◇
その後、ボクとお嬢様は屋敷へと戻った。
ボクは、客室に戻りベッドに倒れ込むと丸1日眠ってしまうのだった。
どうやら、劇的に修練をした所為で疲れ切ってしまったようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます