第22話 1日の終わりに

空はすでに黄昏色に染まっていた。


目の前の案山子は、一撃ごとに壊れていく。


そして、すぐに再生される。


「ハルマンくん、もう日が暮れます。

ここまでにしましょう」


「あ、はい。ありがとうございました」


ボクは、案山子に背を向け、木剣を近づいてきたウェインに返す。


木剣は、もうボロボロになってしまっていた。


「ハルマンくんには、もう打ち込みは必要ないかもしれません」


「ウェイン、ハルマンがこれ以上強くなるにはどうしたらいいですか?」


「そうですね、剣の師匠がいればいいのですが」


師匠。


確かに、ボクにはそう呼べる人はいない。


狩りは、村の人たちに教わって来たけど。


「少しお父様に聞いてみますね」


「お嬢様、よろしくお願いします」


「ハルマンくん、基礎練習は自由にしに来てくれていいですからね」


ボクの仮入団はこうして終わってしまった。



ワタクシはずっと見ていました。


ハルマンが、壊した案山子は1万を超えていました。


最初の一時間では一体の案山子を倒すのがやっとだった。


それから、1時間1時間と時間が経過するにつれて彼の剣撃は熟達していき3時間が経過する頃には一撃で破壊するほどになっていました。


お昼の事でした。


本来ならありえない光景です。


一撃一撃で案山子が壊れ、再生する。


案山子は、自己再生の効果が付与された魔道具です。


本来は、こんな一撃を放てる剣士は早々いません。


「ウェイン、貴方の予想のどれほど先に行きましたか?」


「基礎練習だけで、領軍騎士団長クラスの実力に。

これに技術が加わると彼の勇者様に匹敵すると思われます」


「流石、ハルマンですね。才能の塊です」


勇者の子供だけのことはありますね。


ワタクシは、いい出会いに恵まれたと思います。


それにしても、師匠ですか。


でも、そうすると離れ離れになってしまいそうで嫌ですね。


どうしましょう。


お父様に相談してみましょう。そうしましょう。



その後、ボクとお嬢様は屋敷へと戻った。


ボクは、客室に戻りベッドに倒れ込むと丸1日眠ってしまうのだった。


どうやら、劇的に修練をした所為で疲れ切ってしまったようだった。

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