第17話 騎士の剣
ボクらは一度屋敷に戻り大量の荷物を下ろして今度はアーケードの東出入り口へと向かった。
東出入り口は、屋敷からとても近い位置にあった。
ただ、ここのアーケードは黄色い花の絵が多い気がした。
「黄色いですね」
「ええ、それぞれのアーケードの色は違うのです。
一目見てそれがどのアーケードかわかるようになっています」
黄色のアーケードを潜るとそこには宝石や鉱石、装飾系のお店が立ち並んでいた。
その所為か、客引きは少なく落ち着いたイメージだった。
「最初からこちらから入るべきでした」
お嬢様は、苦笑いをしていた。
それほどに、先程の接待が大変だったことを物語っている。
「さて、ハルマン。こちらから北側を目指しますよ」
北側?
北側には何があるのだろう。
「今日はいきませんが、西側は衣服の区画ですの」
「西が衣服、南が食材、東が鉱石と装飾・・・北はもしかして武器ですか?」
「流石、ハルマンです。
その通りです。
今日は、貴方の剣を注文しようと思っていたのです」
ボクの剣・・・でも、そんなお金ボクは持っていない。
ボクが、暗い顔をしているとお嬢様が手を繋いで歩き始める。
「お嬢様、武器を新調するお金なんてボクは」
「ハルマン、明日から訓練をするには必要なものです。
それに、これは貴方に貸すだけですよ。
いつか、返してください・・・ゆっくりでいいですから」
「ありがとうございます」
嬉しかった。
お嬢様の優しさが。
これが、打算だとしても。
まだ、何もできないボクにここまでしてくれるお嬢様の恩に報いなきゃ。
やがて、ボクらがやって来たのは一軒の武器屋だった。
店構えは、ロッジハウスのような造り。
看板には、確かに武器屋を表す剣と金槌のエンブレムが掲げられていた。
「ここが、当家御用達の鍛冶師が営む武器屋になります」
お嬢様は、店のドアを開く。
カランカランとドアベルが鳴る。
「いらっしゃいませ!おっと、シアンお嬢様。
お嬢様がいらっしゃるなんて珍しいですね」
店の中にはいると、髭面で低身長の男性がそう言った。
彼が、店主だろうか?
「ゲルデ。ワタクシもたまには来ますわ」
「そうですか?ん?その坊主は?」
「今日は彼の剣を見繕ってもらいたくてきたのです」
「ふむ、坊主こっちへ来な」
ボクは、彼に誘われて近くへ行く。
そして、掌を見つめられる。
「お前さん、短剣主体だったようだな。
それで、剣を使うと言うことは騎士の称号持ちか。
そうなると、重心を少し変えた方がいいだろうな。
坊主、ここにある剣でしっくり来るのはどれだ?」
そう言って、ゲルデは5本の剣をボクの前に出した。
ボクは、言われるまま5本の剣を握っていく。
剣は、重さがそれぞれ違うように感じた。
扱いやすいと思ったのは左から2番目の剣だった。
「なるほどな。お嬢様、剣は騎士団に納品でいいのか?」
「ええ、それで構わないわ」
「坊主名前は?」
「ハルマンです」
「よし、明日の朝には騎士団に届けておくから受け取ってくれ。
頑張れよ、ハルマン」
そう言って、ゲルデは注文を受けてくれた。
ボクの剣か。
明日が楽しみだ。
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