第8話 マルクスとシアン
ハルマンを客室に通した後、シアンはマルクスの執務室で事の経緯を話していた。
「ということですので、お父様。
ハルクト様へ内密にお話をお願いできないでしょうか」
「勇者ハルクトか、彼の息子だとするならば確かに優良物件。
だが、場合によっては妾の子とされるかもしれない」
「ですので、内密にです。
それで、ハルマンにはワタクシの騎士になってもらおうかと思っています」
ハルマンの胸にある十字架は聖騎士の証。
明日の洗礼式では必ず「聖騎士」の称号が付与されることは明確。
太陽が示すのは、属性・・・「光」を含む全属性を使うことができる。
聖騎士ハルクトが、勇者と呼ばれるようになったのは唯一魔王と相反する「光」の属性を有するからである。
13年前、ハルクトは魔王討伐隊の一員として魔族領へと赴き2年間の旅の末、魔王と戦い打倒した。
つまり、ハルマンがこの討伐隊の参加時期に生まれているとするならば辻褄が合ってしまうのである。
彼の故郷は、シーク村ということは領境、国境に近しいところにあたるから。
「シアン、ハルクトをいやハルマンを抱きかかえたいというなら建前だけでは御すことは敵わない」
「はい、わかってます。
わかっておりますわ。
最初は、聖痕を見てハルマンが欲しいと思ってしまいましたが。
ワタクシ、ときめいてしまったのです」
シアンが、恋する乙女のような表情を浮かべていた。
そう、彼女は魔の森から領都に辿り着く道中でハルマンの人となりを知ってすっかり彼の事を好きになってしまっていたのだ。
ハルマンの笑顔に、表情に、声に、仕草にその一つ一つにときめいてしまっている。
意地悪して、おどおどする姿を可愛く思ったりハニカム笑顔にドキっとしたり。
シアンにとっては、これが初恋になる。
それは、ハルマンもだが。
「想い人ということだな。
父親としては複雑だが、見ず知らずの貴族に嫁がせるよりは安心だ。
まだ、少ししか会っていないがハルマンから発せられるあの優しく穏やかなオーラ。
カリスマといってもいいだろう・・・ハルクトの了承を得て婿入りもありかもしれないと思ってしまうな」
マルクスもまたハルマンに惹かれるものがあったのかもしれない。
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