第7話 領主マルクス

やがて馬車は綺麗な街路を抜けて高い塀のある建物の前で停車した。


「ハルマン、ようこそ。

領主館へ、今日はゆっくりして行ってください」


「ボクが、領主館に逗留していいのかなぁ?」


「ワタクシならずっと逗留してくれてもいいのですよ」


お嬢様は、頬に両手を当てて顔を赤らめていた。


可愛い。


ドキドキする。


ボク、どうしたんだろう。


胸が痛い。


なんだか、切ない。


「うふふ、ハルマン。顔が真っ赤ですよ、どうしたのですか?」


お嬢様は、平静を装いながら不敵な笑みを浮かべる。


悪戯をする子供の様だ。


ボクらがそうして話していると馬車のドアが開いた。


「お嬢様」


「ウェイン、今降りますね」


お嬢様は、ウェインさんの手を取り馬車を下りた。


彼女は、ボクの方を向く。


「さぁ、ハルマン。行きますよ。

付いてきてください」


「はい」


ボクは、お嬢様の後をついて降りていく。


馬車を下りると、青い屋根のとても大きな館があった。


塀門潜ると色とりどりの花で飾られた庭が広がっている。


なんて、綺麗な庭なのだろう。


「凄い綺麗なお庭ですね」


「うふふ、ありがとうございます。

当家自慢のお庭なんですよ」


「シアン、お帰り」


渋めの低い声の男性の声が聞こえた。


ちょうど庭先から出てきたようだった。


黒を基調としたスーツだが各所に金糸で意匠が施されている。


声と反してとても美形の男性で、年のほどは30歳半ばから40歳手前ほどだろうか。


「只今戻りました、お父様」


「無事でなによりだ」


「そのことなのですが、魔の森で盗賊に襲われたところこのハルマンに助けられまして」


「なんと!ハルマンよ、娘を助けていただき感謝する。

今日はもう遅い。

よければ、当家に逗留されよ。

歓迎しよう」


ここでも、逗留を勧められた。


ただ、領主様もボクの胸元を見ている。


どうしてだろう。


「おっと、ハルマン。

ワタシは、ツァエリの領主マルクス・ディ・ツァエリだ。

よろしく頼む」


「ボクは、ハルマン・シークです。よろしくお願いします」


そうして、ボクは、屋敷へと招かれるのだった。

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