第3話 花咲く街道

ボクは、お嬢様の向かいに座らされた。


「ハルマン、着替えは持っている?」


「いえ、領都で洗礼を受けて往復して帰るつもりだったので」


「どうですの・・・ではワタクシのお家まで眼福とさせていただきましょう」


そういって、お嬢様はボクの胸をキラキラした瞳で見ていた。


確かに、ボクは狩りをするためにそれなりには鍛えてはいるけど騎士の人たちに比べればそんな立派ではないのだけど。


「ハルマンは、洗礼ということは12歳になったばかりなのね?」


「は、はい。今日12歳になりました」


彼女は、少し首を傾げていた。


そして、うんうんと頷いていた。


なんだろう?


どういうこと?


「シーク村でずっと育っていたの?」


「はい、シーク村で狩りをしながら村民として育ちました」


「そう、御父上は?」


「ボクが生まれて間もない頃に旅に出たらしく、それ以来会ったことがありません」


「なるほど、そうなのね」


彼女は、再び何かを思考する。


それがどうしたのだろうか。


ボクは、馬車の車窓から外を眺めた。


花々が咲き乱れた街道が広がっている。


綺麗な光景だ。


色とりどりの花。


草原が、花にまみれているともいえるな。


花がこんなに咲き乱れるということは平和なんだろうけど。


でも、お嬢様は盗賊に襲われていた。


うーん、なんか腑に落ちないな。

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