第2話 お嬢様と出会った

「はぁはぁはぁ」


ボクは息を切らせていた。


人と戦うのはモンスターと戦うのと違ってとても疲れるんだな。


モンスターは直感で行動するし一定の動きしかしてこない。


だから、習性が分かっていれば楽に狩ることができる。


それは、この森で生活していれば当たり前のこと。


「少年、礼を言う。

君が来てくれなければ我々はお守りすることができなかっただろう」


「いえ、ちょうど領都に洗礼を受けに行く最中で通りかかれただけなので」


「それならば、神の思し召しともいえるな」


「ウェイン!」


馬車の中からとても涼やかな少女の声が聞こえた。


馬車には、盾をモチーフにした意匠に剣と月が記されていた。


どこかの貴族の旗だろうか。


「お嬢様!?は、ウェイン・ハルバート。ここに」


「ワタクシにも挨拶をさせてください」


「畏まりました。

少年、お嬢様がお会いになるそうだ。

くれぐれもくれぐれも粗相のないようにな」


ウェインという騎士は、馬車の戸を開ける。


そこには、金髪に金色の目をした少女がいた。


髪は、ウェーブのかかった腰元までのとても長い髪で水色を基調としたドレスを纏っていた。


「ありがとう、貴方のおかげで命を拾いました。

あれ・・・貴方その胸の印は」


胸の印?ボクは、自分の胸を見る。


ボクの胸元は盗賊のナイフによって真一文字にシャツが切られていた。


そして、胸に生まれた頃から刻まれている印が露わになっていた。


太陽の形をした意匠に中心に十字架が刻まれている。


この印がなんなのかよく知らない。


「貴方、名前は?」


「ハルマン・シークです」


「シーク?え、シークとはこの先の辺境の村ですわよね?」


「はい、そうです。

シーク村は領境の村です」


「まあまあ、ハルマン。

領都に参るのですよね。

ワタクシも帰るところだったのです。

さあ、馬車に乗りなさい。

ワタクシの話し相手になりなさいな」


ボクは、お嬢様にそう言われて呆れ顔のウェインによって馬車に押し込まれた。


なんだっていうんだろう。


このお嬢様は何がしたいんだ!?


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