第12話

初めて連れて来られた天国という場所は、

非常に分かりやすく、大きな看板が建ててあった。


『天国』


私の半歩後ろを歩くおじいさんは、看板を見上げながら、

この看板は、見る人が使う言語に合わせて、文字が変化するのだと教えてくれた。


大きな看板の横を通り抜けると、見上げるほどに大きな扉があった。

恐る恐る扉の前に立つと、触れる前にその扉が開かれた。


「お待ちしておりました。こちらで手続きをお願いします。」

にこやかな白髪の老人に迎えられた。


お待ちしてたんだ?

少し驚きながらも、今夜の不思議な出来事の数々に、

私は、あまり動じることがなくなっていた。

今夜は、私が知る常識は、何もかもが通用しないようだ。


受付らしき場所で、聞かれるままに、

彼の生前の名前と、生年月日、命日を伝えると、

龍の間でお待ち下さいと案内されながら、

星のモチーフがついたペンダントを渡された。


これは、入国許可証のようなものだそうだ。


早速、ペンダントを首に掛けながら、

『龍の間』と記された部屋へと向かった。


ドアを開けると、中は、とてつもなく広い部屋だった。

私が部屋へと入ると、おじいさんも半歩遅れて部屋へと入って来た。


部屋の中へ入るとすぐに、中央へ向いた大きめのソファーが置かれている。

ソファーと対面する遥か向こう側の壁には、

丁度、人が通れるほどの大きさで、アーチ型に光る場所があった。


ソファーと、壁の一箇所が光っている以外、何もない部屋だったが、

私たちは、部屋中を見回してから、漸く、ソファーへと座った。


「そのペンダントが時間を教えてくれる。光が強くなったら、時間じゃ。」


おじいさんの言葉に頷き、弱く七色に光る星にそっと触れた。



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