第9話

彼のような存在は、そこらへんにたくさんいるけれど、

彼らの方から姿を見せようとしなければ、誰も見ることは出来ないのだと言う。


人間の前に姿を表す時には、私の隣に座っているおじいさんのように、

人間にとって分かりやすい姿であることが多い。

けれど、その限りではなく、時には、

その姿を見せぬままに、願いを叶える者もあるという。


「姿を見せぬまま願いを叶えるのは、至難の技じゃよ。

なにせ、願う者の話を聞かなくとも全てを悟らねばならぬからな。」


願いを叶えるため、その人間を観察するが、

それでも、その全てを知れるわけではない。

その人が持つ本質を全て知ることが出来るのは、神だけだとか。


彼のように、修行の身である場合は、該当の人間を自分の目でよく観察し、

何を望むのかを、徹底的に調べ上げるのだそう。

最終的には、該当となった人と接触し、

確認作業をするのが一般的なやり方なのだとか。

それはさっき、私が聞かれた何処へ行きたいかという質問に当たるのだろう。


「じゃがな、その人間の本当に望むことを叶えることは禁止なのじゃ。」

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