第2話

「迎えに来たよ。」


深く静かで、とても優しい声で目が覚めた。

無意識に携帯電話の画面を確認すれば、0:00。

眠りに就いてから、然程、時間は経っていない。


ボーッとする頭のまま、目を擦ったところで、窓を叩く音が聞こえた。

そして、再び聞こえたのは、さっきの声だ。

迎えに来たよ と。


ここは、二階だ。

誰かが窓を叩くわけはないし、窓の外に誰かがいるはずもない。

恐る恐る、細くカーテンを開けてみると、窓の向こうにいる誰かと目が合った。


「うわ!」


びっくりして、後ろに飛び退いた私は、そのまま尻餅をついてしまった。


「痛っ・・・」


小さく声を上げながら、体勢を直そうとした私の目の前には、

どこから入って来たのか、知らない人が立っていた。


「おめでとうございます。あなたの願いが叶いました。」


ボーラーハットを取って、恭しく、お辞儀をするのは、

丁度、座ったままの私と、同じくらいの身長の小さなおじいさんだった。


綺麗な白髪を後ろに撫でつけ、

立派な白髭を蓄えているそのおじいさんは、

カチッとしたスーツに身を包んでいる。


ふさふさの長い眉毛の奥に見えるのは、ブルーグリーンの瞳。

とても綺麗な色をしている。


ニコニコと笑いながら、彼は更に言った。


「その願い、今夜、この爺が叶えて差し上げましょう!さぁ、支度を!」



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