第2話 先生!エロしかない食事とお風呂!

 「……さてと、このくらいあれば十分ですよね」

 「……」

 「もう、どうせあそこにいても惰性で過ごすだけだったんだし良いじゃないですか」

 「……まあ」

 俺は彼女に手を引かれるがまま、学校内の奥にある寮みたいな場所の1室に来ていた。

 多分、彼女の言っていることは本気で……このままここで暮らすことになるんだろう。

 『ここで働く』

 その文字だけが残り、理解を鈍くさせていく。

 実際、俺が誰かに何かを教えるなんてしたことない。

 社会人経験もない……ましてや、バイトだって長く続いたことのない人間だぞ。

 ……それなのに、今目の前にある状況って……。

 

 「とりあえず、布団と冷蔵庫に電子レンジ……あ、テレビやパソコンは後々搬入するんで待っててください」

 「……はい」

 「おーい、抜け殻になっちゃ困るんですけど?……あ、私の胸でも揉んでみます?こう見えても大きい方なんですよ?」

 「ば、馬鹿じゃないんですか!?」

 「むう……この身長でこの体系……まさに“ロリ巨乳”ってやつですよ?アナタのお好みじゃないですか」

 「……見たんですか?」

 「見ました」

 「……」

 気まずい。気まずい。

 正直言って、今まで真正面でこの人を見れていない。

 ……だって、絶世の美女っていうのは遠くから眺めるのが一番幸せだろ?

 「コホン。話を戻しましょう。……明日からは子供達の教育をしてもらいます。といっても、3名しかいないんですけどね」

 「3人だけ……?」

 「はい。3名だけ……だから、学校の先生と言っていいのかわかんないんですけどね。それに、皆一緒に暮らしているんですよ。ここに」

 少しだけ俯きながら答える彼女に、ドキドキした。

 「でも、俺何も教えることできないけど」

 「あ、そこは大丈夫。私が全て教えてるし」

 「……え?じゃあ、なんで––」

 

 「環先生!!!!かえってきた~!!!!!??」


 遠くの方から大きな声で……彼女とは違った女の声が響き渡る。

 その声は、俺の問いをかき消し––声と走ってくる音が近づいてくる。

 「わ!帰ってた!!……あれ?このおっさん誰?」

 「ただいま!えと、明日から私と一緒に教える先生よ」

 「先生?」

 そう女の子は言うと、俺の方へと軽蔑した目を向けてくる。

 「……ふーん、ねえ。ちゃんとゴムはつけておかなきゃダメだよ?私が他の子来させないようにするからさっ」

 「「……は?」」

 はじめて声が被った。

 「えへへ、冗談冗談。とりあえず、ご飯できているから来てくれって」

 「わかったわ」

 そう女の子は告げると、俺の手に何かを握らせて立ち去った。

 

 「はあ……あの子も高校生くらいの年齢になって色々勉強してるんでしょうか……」

 「そ、そう言えば」

 「あ、はい」

 「名前……環さんっていうんですか?」

 「はい……あれ?自己紹介してませんでしたっけ?私は環(たまき)と言います。この学校の校長兼先生兼運営全てをしています」

 「……なんかすごいですね」

 「はは、まあ……小さいからできてるんですよ。この胸みたいに大きかったらパンクしてます」

 「下ネタ好きなんですね」

 「……は!いやいや、ないですって!」

 なんとなく、この先生だからだろう……俺の手にゴムを握らせる女の子がいるのは。


 「と、とりあえず、ご飯にいきましょう!……あと、この私とアナタは運命共同体といっても過言ではありません。ため口でいいですよ」

 「そう言われても……」

 「じゃあ、今日はお酒でも飲んでざっくばらんにいきましょ!!!」

 そう言って、またも俺の手を引っ張り部屋から俺を連れ出した。

 女の子が言ってたご飯場所というのは、部屋を出て3分もしないうちに着いた。

 そして、俺と環先生以外誰もいなかった。

 「……あれ?さっきの子は?」

 「あー……多分、気を利かせたんじゃないかな?ほら、この料理凄いでしょ?」

 「おお!!」

 目の前には大衆居酒屋に出てきそうな酒の肴になる料理とちゃんとお腹と栄養に適した料理が並んでいた。

 「出来立てだよ!食べよ!?あ、お酒は何がいいかな?」

 「何があるんです?」

 「何でもあるよ~?私、酒豪で何でも飲めちゃう人だから」

 「じゃ、じゃあおススメで」

 「おっけ~!」

 そう言って、彼女は食堂のような場所の奥の方からアルコール度数が低いお酒を持ってきた。

 「明日あるからね~って建前ね。最初はならしていかないと」

 「そ、そうですね」

 そう言って、2人だけの食事会が開始された。

 

 今思い返せば……この場所は古くもないし、ましてや学校っていう感覚もない。

 それに、貸しスタジオのような……今まで使われていなかったような感じがした。

 

 「あっはっは!!でさ、言うわけよ!“あんあん”って何かエロいですよね!!って!!!!」

 「確かに!!!!」

 違和感を互いに拭うかのように––数秒で酒を飲み干した俺達は2杯、3杯、4杯と飲み進めていく。しかも、度数も上げて。

 そうなると、何かが外れたかのように……こんなバカな会話をしていくわけ。

 まあ、俺もこんな話嫌いじゃないからね。

 「……もう、環先生うるさい。あ、こんばんは……誰?」

 そんなバカな会話をシャットダウンするかのように––奥の方から男の子の声が聞こえた。

 「おっと、ごめんごめん。こっちは明日から一緒になる人だよ~ほら、挨拶して」

 「「こんばんは」」

 彼女の言葉がどちらに向けた言葉なのかわからず、俺と男の子は同時に挨拶をした。

 「お~、良いね良いね」

 「……はあ、環先生一度水飲んで。お風呂湧いてるから」

 「おっけ~」

 「あ、そちらも……お腹いっぱいになったらこのままでいいんで……お風呂も入ってください」

 「あ、ありがとうございます」

 年下の男の子に何となく敬語になる俺……ヘタレすぎんだろ。

 「じゃあ、後は環さんにお願いしてっと……邪魔しないでね?」

 「ほ~い」

 完全に酔いつぶれかけの環さんが手を振り、男の子は消えていった。

 そして、環さんと俺は互いに水を持って来て……一気に飲み干した。

 そして、ウコンドリンクも飲んだ。


 「……あー、吐きそう」

 環さんを浴室がある場所へと案内されるがまま連れて行き、俺は部屋へと戻って布団へと倒れこんだ。

 これが夢であってほしい……いや、あってほしくない。

 色々な感情が酔いと一緒に回り続け、意識がどんどんと遠のいていく。

 そんな時だ、俺の部屋を何かが蹴破るように音を立て––入ってきた。

 「お~い、お風呂はいろ~?」

 「た、環さん!?」

 明らかに生まれたままの姿の環さんがそこにはいた。

 何も隠さない……その姿はAV以上の興奮を俺に与えてくれた。

 「……お?どうした?」

 「あ、いや!か、隠してください!!」

 「え~?いいじゃん。だって、私の身体じゃ興奮しないんでしょ?」

 「は、はあ!?ななななななななななんですか!」

 「だって、一番興奮するのって“漢”なんでしょ~?」

 「ち、違います!!!!」

 「……あれ?パソコンの画面男の顔だったような……」

 「誤解です!……ほ、ほら!こ、興奮はしてますよ!?」

 そう言って、恥ずかしいけども……俺のムスコを指さした。それはそれは、けたたましいお姿だった。

 それを見た環さんの顔が酒の酔い以上に赤くなるのがわかる。

 「……じゃ、じゃあ……まあ、いいでしょう。あ、でも今日……つ、疲れたでしょ?……ここのお風呂広いからさ……温まりましょ?」

 「……えと、先に隠してください」

 俺は近くにあったバスタオルを環さんに投げた。

 それを、一回でキャッチできなかった彼女は体勢を崩し……まあ、俺の目の前に醜態をさらした訳だが……紳士な俺は目をつぶってスルーすることにした。

 「あっはは……場所はもう知ってるよね?先に行ってるから来てね」

 「わ、わかりました」

 

 そこから俺は自分の部屋に置いてあった部屋着(何故かサイズ知っていた)とタオルを持って––10分くらい経って浴室へと向かった。

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