第4話 吸血鬼がいる世界で

 一方的に話す吸血鬼だけど、今の私はそんなことに動揺しない。

 過去にいろんな壮大なことを経験しすぎて、ちょっとしたことでは、動揺しなくなっている。

 それが、慣れっていうものだろうか?


「吸血鬼さん、これで君がこわくないってことがわかったわ」


 私は、静かに答えた。


 警戒心が緩くなってからは、敬語を使わなくなった。


「嬢ちゃん、肝が据わってないですか?」


「ええ。


私は同い年の子と比べて、落ち着いているってよく言われるけど、仕方のないことなの。


平凡な人生を、物心ついた時から送っていないの。


吸血鬼さんも、人生をどうしたいか選べたかしら?」


「選べる時と、そうでない時がありました。


ですが、嬢ちゃんの瞳のようにすべてを諦めきっているということはありません。


人生には、複数の選択肢があります。


それを、無駄にしたくないのです。


嬢ちゃんには、それが理解できますか?」


「理解できるか、できないかの二択で聞かれてしまえば、理解しづらいと答えるわ。


私に無縁な感情よ。


今の私は置かれた状況を、環境をどう乗り切るかなの。


だから、戦う手段をちょうだい」


「戦う・・・・ですか?


嬢ちゃんから、何の魔力も感じません。


一体、何を目指しているのですか?」


「自分の身は、自分で守れるくらいに強くなりたいの。


惨劇も、起こさせない。


ずべて、私の手で・・・・」


「復讐ですか?」


「私は、逃げたいの」


「逃げるですか?」


「逃げ切るために、戦いたいの」


「嬢ちゃんから、何の魔力も感じないっていうことは、何を意味しているかわかりますか?」


「私は戦わない方がいいということかしら?」


「そういうことです。


戦うことは、好ましくありません」


「私は、生きたい・・・・。


幸せな未来をつかみたい。


だけど、今のままでは幸せなんて訪れない。


だから、私には必要なの」


「嬢ちゃんの志は、認めました。


ですが、それはあまりにも無謀です。


仕方ありません。


嬢ちゃんには、吸血鬼の仲間を紹介しましょう。


そこで、嬢ちゃんが無謀すぎることをわからしましょう」


 私は吸血鬼さんに腕を引かれ、マントの中に包まれ、どこかに連れて行かれた。


 ついた場所は、お墓。

 ここについてから、吸血鬼さんは私を解放してくれた。


「こんなところに連れて、どうするつもりかしら?」


「どうもしません。


嬢ちゃんの好きなように過ごしてください」


「なら、好きにさせてもらうわ」


 どこからか、吸血鬼らしきもの達が現れる。


「人間だ」


「明らかに、人間の匂いがする」


「魔力は、持ってなさそうだ」


「こんなところに、何の用だろう?」

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