第3話 異種族だけが集まる森

 私は夢も諦めていたし、希望も捨てきっていた。

 だけど、オーナーの「立ち上がってみないか?」という言葉に勇気をもらえた気がした。


「私、頑張りたい。


幸せって思える人生を見つけらるようになりたいの」


 今まで、逃げ切ることしか考えてこなかったけれど、私だって幸せな人生を歩みたいんだ。


「私、あいつらが恐れる存在になれるなら、何だっていいです。


何にでもなります!」


「なら、紹介してあげるよ・・・・」



 酒場のオーナーが紹介してくれた場所は、他種族が住む広大な森だった。

 オーガー、吸血鬼、エルフ、ドワーフなど空想上の種族と思われる存在が目の前にいる。


「すごい・・・・」


 私は、感動していた。

 これなら、追手はこれなくなるかもしれない。


「これは、これは人間であるね」


 目の前にいは、吸血鬼と思われる格好をした黒ずくめの男の人がいた。

 ここは、自分より戦力が上の相手なので、下手に刺激しないようにしよう。


「どなたですか?」


「わたくしは、ただの吸血鬼ですが、嬢ちゃんは?」


「私も、ただの人間です」


「槍を抱えているみたいだけど、戦闘武術を身に着けてきたのですか?」


「逆です。


戦闘武術を身に着けたいんです」


「ここは、修行場じゃないのですが」


「そんなことは、一目瞭然です。


私は強いパートナーがほしいんです」


「パートナーかあ?


嬢ちゃんが、吸血鬼になるって言うのなら考えてあげなくもないけど」


「吸血鬼になると、どうなるんですか?」


「まあ、無敵になりますね」


「吸血鬼は、日光に弱いと聞いたのですが」


「嬢ちゃん、そんな情報をどこから持ってきたのですか?


吸血鬼には、2種類あるんですよ。


その中の一つが、日光に弱いとかニンニクがだめという特性を持っているだけであって、わたくしはそれに該当しません。


現に、こうして昼間に活動できていることが何よりの証拠ですよ」


「吸血鬼さんは棺桶に入ったり、人の血を吸ったり、コウモリに変身したり、永遠の若さを持っていたりとかしなんですか?」


「嬢ちゃんは、聞いてみると知識が偏っていますね。


どれも、わたくしには当てはまりません・


棺桶なんて死人と勘違いされて、寝ている間に燃やされるようなことはしません。


人の血なんてとんでもないです。


意識、記憶のどれかを奪ったほうが効率的です。


こっちも、顔を覚えられたらたまったものじゃありません。


コウモリに変身するとか、手品師ですか?


永遠の若さなんて、あるわけないじゃないですか。


どんなアンチエイジングしても、細胞の老化は遅らせることはできても、劣化はしますよ」

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