花梨side その①
花梨side その①
初めて通うことになった海皇高校の入学式とSHRを終えて、私は自宅へと帰ってきました。
えへへ。半日だけでしたが、今日は色々なことがありました。
中でも一番は、優しい先輩と知り合いになれたことでしょうかね。
「ただいま!!」
手にした合鍵で玄関の扉の鍵を解錠し、私は自宅の中に入りました。
「おかえりなさい、花梨」
私の帰宅を知ったお母さんが、廊下の向こう側からパタパタとやって来ました。
私が中学生の時に作って、母の日にプレゼントした花柄の可愛いエプロンを身につけているので、きっとお昼ご飯を作ってる所だったと思います。
「そろそろ帰ってくる頃かなと思ってね。ちょうどお昼ご飯を作っていたのよ」
「えへへ。ありがとうお母さん。時間ぴったりだね!!朝ご飯を食べてないからお腹ぺこぺこだよ」
「ふふふ。貴方にしては珍しく寝坊をしてたからね。今日のお昼ご飯はオムライスよ」
「やったね!!卵は少し固めでお願いね!!」
「ふふふ。わかってるわよ。じゃあ手洗いとうがいをしたら居間まで来てちょうだい」
「はーい」
私はお母さんにそう返事をしたあとに、洗面所に行って手洗いとうがいをしました。
そして、私が居間へとやって来るとテーブルの上には出来たてのオムライスとオニオンスープが用意されていました。
「わー!!ご馳走だね!!」
「ふふふ。私も分はこれから作るから先に食べててもいいわよ?」
「ううん!!一緒に食べようよ、お母さん」
「そう?じゃあすぐに作るからちょっと待っててね」
私は少し猫舌だから、出来たてよりは少し冷めてからの方が美味しく食べれるんです。
なのでお母さんさんの分が出来上がるまで待つことにしました。
少しすると、お母さんの分のオムライスが出来上がり、テーブルの上に置かれました。
お母さんはふわとろのオムライスが好きなので、私の卵とは少し違ってます。
「お待たせ花梨。それじゃあ食べようかしら」
「うん!!」
そして、私とお母さんは「いただきます」と声を揃えた後に、オムライスをスプーンで掬ってひと口食べました。
程よく冷めて私の口に合う温度になっていたオムライスは、とても美味しいです!!
「とても美味しいよ、お母さん!!」
「ふふふ。ありがとう花梨」
お母さんも自分で作ったオムライスを美味しそうに食べています。料理上手なお母さんの下に生まれて幸せです。
「そう言えば花梨。朝はギリギリだったと思うけど、遅刻はしないで済んだのかしら?」
オニオンスープをひと口飲んで、お母さんは私に朝のことを聞いてきました。
私は口の中にあったオムライスを飲み込んで、オニオンスープをひと口飲んでからその質問に答えました。
「うん。親切な先輩が居てね、その人の自転車に乗せてもらったんだよね」
「もう、自転車の二人乗りは違反よ?」
「えへへ。先輩にもそう言われたけど甘えさせてもらったんだ」
「花梨は甘え上手ね。それで、その先輩にはお礼はしたの?」
「ありがとうございます。って話はしたよ。あとは帰りの時にも会ったんだけど、その時は友達とお昼ご飯を食べて遊びに行くって話だったから、そのままバイバイしてきたの」
「そうだったのね。なんだか悪いわね。機会があったらお礼をしたいところだわ」
「えへへ。何だか先輩とは長い付き合いになりそうな気がするから、もしかしたらそういう機会があるかもしれないよ?」
「貴方がそこまで懐くなんて珍しいわね?そんなに気に入ったのかしら?」
小首を傾げるお母さん。確かに私は他人に対してある種の『警戒心』を持って接しています。
それは私自身に問題があるから仕方の無いことだと思ってます。
ですが、あの先輩は出会った時から『警戒心』を持たなくても大丈夫。と感じることが出来たんです。
きっとそれは……
「私のことを知らないってのはあるけど、自然体で話してくれるのはとても嬉しかったんだよね」
「ふふふ。じゃあこの出会いは大切にしないといけないわね」
そう。先輩との出会いは大切にしたいと思う。
あとは、先輩の後ろにいたものすごく可愛い女の子の先輩が、私のことを睨みつけてたのが印象的でした……
あれは私のことを『敵』として見てる目でした。
きっとあの人は、先輩のことを『好き』なんだと思います。
先輩との朝のやり取りで、あの人に彼女が居ないってのはわかってます。なのであの女の人とは付き合ってるわけでは無いのでしょうね。
つまり、あの方の片思い。
ふふふ。先輩も罪な人ですね!!
そんなことを考えながら、私はお昼ご飯を食べ終わりました。
「ご馳走様でした!!」
「ふふふ。お粗末さまでした」
私は自分の食べ終わった食器を流しに入れたあと、冷蔵庫から麦茶を、食器棚からは二つコップを取りだしてテーブルの上に置きました。
そして、コップに冷えた麦茶を注ぎました。
「ありがとう、花梨」
「えへへ。この位はするよ」
冷えた麦茶をひと口飲んでから、私はお母さんに言いました。
「高校では演劇部に入ろうと思ってるんだよね」
「へぇ。いいと思うわよ?確か海皇高校の演劇部は伝統のある部活よね。貴方だったら舞台映えもするでしょうしね」
「えへへ。あとは演じることは得意だからね」
「ふふふ。それに貴方は中学生の時は、自室で小説を書いてたわよね?台本を書いたりするのも面白そうね」
ちゅ、中学生の時の小説は……あまり人には読ませたくありません……
く、黒歴史と言うやつです!!
「だ、台本を書くかは別として、高校では文化系の部活に入りたいんだよね。小学校と中学校では運動系をやって来たからね」
小学校ではサッカーの習い事をしてました。
中学校ではバレーボール部に所属してました。
私は小さいのでリベロでしたね。
なので高校では文化系をやりたいと思ってました。
好きな小説家の人が、高校生の頃は演劇部だったと知ったからです。えへへ。なんだかミーハーな理由だと思ってしまいます。
「そうなのね。新しいことにチャレンジすることは良い事よ」
「ありがとうお母さん。もし公演とかで私が舞台に立つことになったら呼ぶからね」
「ふふふ。そしたらお父さんと一緒に見に行くわ」
こうして、私は入る部活を決めて、明日のための準備をするために自室へと戻りました。
そして、明日は寝坊をしないようにしっかりとアラームをセットしたあとは、少し溜まっていた小説を読んでいきました。
そうしていると夜になって、お父さんがお仕事から帰ってきました。
お父さんとお母さんと一緒に夕飯を食べた後は早めにお風呂に入って布団に入りました。
「えへへ。優しい人が多い部活だといいな」
布団に入った私は明日のことに期待を寄せながら部屋の明かりを落として目を閉じました。
「おやすみなさい」
私はそう呟いて、夢の世界へと旅立って行きました。
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