第五話~ゲーセンでは祐希の吉見さんに意味深な言葉を言われた~
第五話
「ふぅ……食った食った。腹いっぱいだな」
頼んでいた料理を全て食べ切り、俺はコップに残っていた水を飲み干した。
「気持ちいい位の食べっぷりだったわね」
百合香はそう言いながら俺のコップに水を注いでくれた。
「ありがとう、百合香」
「別にいいわよ、このくらい」
俺が百合香とそんなやり取りをしていると、同じようなタイミングで食べ終わった祐希が、空になったコップをこっちに差し出して言ってきた。
「なぁ、百合香。俺にも注いでくれよ」
「は?それくらい自分でやりなさいよ」
「辛辣過ぎませんか!!??」
「黙れリア充。そのくらい自分でやれ」
「拓也まで!!??」
俺たち二人から『NO』を突きつけられた祐希は、渋々自分で水を注いでいた。
「それで、この後はあそこのゲーセンで遊ぶって話だけど、祐希の彼女も来るんだよな?」
そして、俺はコップの水を飲みながら祐希にそう問いかける。
「そうだな。さっきメッセージが来たけど、そろそろこっちに着きそうだ。って話だからな」
「涼香ちゃんに会えるのは楽しみだわ。本当に、祐希くんには勿体ないくらいの女の子よ」
「あとはそうだな、祐希に彼女が出来たってのはオフレコにしておいた方が良いとは思うよな。支援金が減る可能性があるからな」
うちの高校には『部活動支援金制度』ってのがあって、お気に入りの部活や生徒個人に『支援金』という名でお金を振り込むことが出来る。
その制度で、女子人気の高い祐希や男子人気の高い百合香には片手では足りないレベルの万円が『支援金』として振り込まれている。
そんな祐希に彼女が出来た。なんてことになれば、ガチ恋勢みたいなところからの支援が減りそうだからな。
「いや、それでも機を見て報告はしていこうと思ってるよ。俺は隠し事って苦手だからさ」
「そうか。まぁ恋人が居ても支援金が減らないパターンもあるからな」
そして、俺たちは自分たちが食べた分の料金の支払いをしたあとに田中うどんを後にした。
ゲーセンは田中うどんから歩いてすぐのところにあるので、自転車はその場に置いたままにさせてもらった。
まぁ無断で使用してるわけじゃないから別にいいよな。
目的地のゲーセンに俺たち三人がやってくると、見慣れない制服の女の子が男二人に絡まれている姿が目に入った。
「わりぃ、二人とも。ちょっと行ってくるわ」
眉間に皺を寄せた祐希がそう言ってその現場へと走って行った。
「もしかして、男二人に絡まれてるのが祐希の彼女?」
「そうよ。あの子が
俺の問いかけに、百合香はそう答える。
栗色の髪の毛を腰まで伸ばし、いいところのお嬢様。といった風貌の彼女。おっとりとした顔立ちをしている。
強豪野球部のマネージャーをしてる。とは見えないな。
「へぇ……なんて言うか押しに弱そうな見た目の女の子だな」
「そうね。だけど彼女のマネージャーとしての能力はピカイチよ」
そんな話をしていると、男二人から彼女を救い出した祐希が吉見さんと一緒にこちらへとやって来た。
「ふふふ。ありがとうございました、祐希さん。とても困っていたので助かりました」
「まぁ……なんとなくこうなりそうな気はしてたんだ。現地集合にしたのは間違ってたな。すまん」
「お気になさらずに。私としてもかっこいい祐希さんの姿が見れて嬉しかったですよ?」
「……そうか」
……そんな会話が聞こえてきた。
ち……リア充爆発しろ!!
「ねぇ、拓也くん。なかなか酷い表情してるわよ……」
思考が顔に出ていたのか。俺の方を見上げながら百合香が少しだけ呆れたようにそう言ってきた。
「すまん……感情が表に出てしまったんだな」
俺がそう答えると、目の前まで来ていた吉見さんがペコリとお辞儀をした。
「百合香さんはお久しぶりです。山瀬さんとは始めましてですね。吉見涼香と申します。祐希くんとお付き合いをさせていただいております。お見知り置きをよろしくお願いします」
「始めまして。山瀬拓也です。そうか、二人の知り合いだから俺の名前を知ってるんだな」
「はい。山瀬さんのことはよく聞いてますよ。特に百合香さんからは……」
「涼香ちゃん!!??」
何かを言おうとした吉見さんの言葉を遮るように、百合香が声を張り上げた。
「ふふふ。これは内緒でしたね?」
「もぅ……辞めてよ涼香ちゃん……」
人差し指を立てて唇に当てながら吉見さんはイタズラっぽく微笑んでいた。
どうやら見た目に似合わず小悪魔的な性格のようだ。
そして、女の子二人の話し合いが落ち着いたところで、俺は祐希に話を振る。
「それで、この後はゲーセンで遊ぼうかって話だけど、二対二で別れる感じでいいのか?」
「そうだな……涼香はどうしたい?」
「私は祐希くんと二人で遊ぶのも捨て難いと思ってますが、山瀬さんとも親睦を深めたいと思ってますから、最初は四人で遊べるものが良いと思ってます」
ははは……なかなか嬉しいことを言ってくれるな。
「だったらバスケットのシュート対決なんかどうかしら?あれなら二対二でチームに別れて勝負が出来るわよ」
「なるほど。それは悪くないな。じゃあ俺と涼香のチームと拓也と百合香のチームに別れて勝負と行こうか」
「ふふふ。私のわがままを聞いてくださりありがとうございます」
「いや、俺としても吉見さんとは親睦を深めたいと思ってたんだ。親友の彼女だからね」
「そう言ってくれると嬉しいです。山瀬さんの話は祐希くんからも聞いてますよ?」
へぇ?祐希からはどんな話をされてるのかな。
少しだけ気になるところだな。
そう思っていると、吉見さんがニコリと笑いながら俺に言ってきた。
「とんでもない鈍感野郎。と伺っております」
「……え?」
と、とんでもない鈍感野郎!!??
「え、えと……それはどう言う意味で……」
「ふふふ。初めてお会いして、それは確信に変わりました。これは百合香さんも苦労しそうですね」
微笑みながらそう言う吉見さん。
一体どう言う意味なのか……
「ほら!!二人とも行くわよ!!」
「親睦を深めるのは構わないけど、涼香は俺の彼女だからな!!」
し、親友の彼女に手を出そうなんて思ってないぞ!!
「ふふふ。あまり話していると祐希くんに嫉妬されてしまいますね」
ゲーセンの入口にいた二人の言葉に、吉見さんはそう呟いていた。
「お待たせしてすみません。今から向かいますね」
吉見さんはそう言うと、ゲーセンの方へと歩いて行った。
「……とんでもない鈍感野郎……か」
……もしかしたら、百合香の言葉とそれはセットなのかもしれないな。
俺はそう思いながら、吉見さんの後を追ってゲーセンの方へと歩いて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます