第29話、アシストシステム

「そういえば行きはタクシーだったけど、今回はたむくんなの?」

「タクシーだと自由が効かないんで。途中の街とか寄りたいですよね?」

「もちろん。出来れば地元の人が使うスーパーとか。あ、歴史的だけど小さな街とかもいいよね。知られざる有名ブランドメーカとか?」

「それ、有名じゃないんじゃ?」

「あ、日本で、が抜けた。ごめん」

「なら、バイク用品メーカの工場直売店がありますよ」

「俺バイク乗らないんだよねー。でも、見るだけみたいかも。ボローニャに行く途中にあるの?」

「はい。途中でガソリン入れるんでついでに寄りましょう」


「手放し運転やってみて?」

「万が一があったら嫌なんで」

「ずっと前向いて、ブレーキペダルに足載せてたら自動運転じゃないよね?」

「事故時の責任は道路管理者と通信事業者、自動車メーカですけど、救護責任や事故後の責任は運転者です。事故が防げるに越したことはありません。あ、助手席にもブレーキペダルがあるんですよ」

「マジで?」

「気づいた人が止められます。もちろんその前に何重にも周囲確認してから作動します」

「今踏んだら?」

「作動しません」


「異世界なのは責任の所在だけだった件」

「なんすか、それ?」

「本当はスライムって有名なモンスターになったっていう、むかし流行ってたライトノベルの題名。子どもたちが好きで見ていたんだ」

「最近の流行りって、学校卒業しちゃうと追いつかないんですよねー」

「わかる。俺も子どもいなかったら無理」


流れる車窓は緑がいっぱい。

助手席って快適だな。

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